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サイト・スペシフィック

Site-Specific
更新日
2024年03月11日

芸術作品やプロジェクトの性質を表わす用語で、その場所に帰属する作品や置かれる場所の特性を活かした作品、あるいはその性質や方法を指す。サイト・スペシフィックな作品やプロジェクトが生まれた背景として、20世紀後半に絵画や彫刻の概念が拡張され、インスタレーション、アースワーク、ランド・アート、パブリック・アート、パフォーマンス、オフ・ミュージアムといったさまざまな表現形態が生まれたことや、ロザリンド・クラウスによる彫刻、建築、風景を巡る議論などが起こったことが挙げられる。また、日本では具体的に1970-80年代のパブリック・アートに対する流行への反省があると考えられている。これらの批判に共通するのが「脱ホワイト・キューブ」「脱美術館」であり、既成の空間から飛び出したアートは、場所の固有性を重視するようになる。「場所の特性」にはその土地の環境や生活空間、歴史的、政治的、文化的な場の成り立ちまで含まれ、作家はそれらの諸条件に注目し、作品に組み込む。サイト・スペシフィックな作風で知られる主な作家に川俣正、アンディー・ゴールズワージーなどがいる。地域で展開されるアート・プロジェクトとも関わりが強く、サイト・スペシフィック志向のアート・プロジェクトの原点に、1977年から開催されているミュンスター彫刻プロジェクトが挙げられる。このプロジェクトの特徴は作品の制作や設置において、アーティストが現地に滞在しながら、市民との議論を重ねて制作をしていく「ワーク・イン・プログレス方式」を採用していることである。国内の代表例としては、越後妻有アートトリエンナーレやベネッセアートサイト直島などがある。

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参考文献

『文化経済学』30号,「現代アートと地域再生  サイト・スペシフィックな芸術活動による地域の変容」,野田邦弘,文化経済学会,2011
『反美学 ポストモダンの諸相』,「彫刻とポストモダン 展開された場における彫刻」,ロザリンド・クラウス(室井尚訳),勁草書房,1987
『社会とアートのえんむすび 1996‐2000』,「脱美術館化するアートプロジェクト」,村田真,ドキュメント2000プロジェクト実行委員会、トランスアート,2001
『アートレス マイノリティとしての現代美術』,川俣正,フィルムアート社,2001