サンボリスム(象徴主義)
- Symbolisme(仏)
- 更新日
- 2024年03月11日
19世紀末のフランスで興った芸術運動のひとつであり、その範囲は詩、文学、音楽、絵画など広範囲に及ぶ。文学の概念としての「サンボリスム」は、『フィガロ・リテレール』に掲載されたJ・モレアスの「文学宣言」(1886)に由来する。詩においてはボードレール、マラルメ、ヴェルレーヌ、音楽においてはドビュッシーやヴァーグナーが代表的な人物として挙げられるが、ここでは主に絵画におけるサンボリスムについて記述する。他のジャンルと同じく、絵画におけるサンボリスムには19世紀末の科学や機械万能主義に対する反発が色濃く反映されている。シャヴァンヌ、モロー、ルドンらサンボリスムの画家たちに共通しているのは、人間の内面的な苦悩や夢想を絵画によって象徴的に表現しようとした点にある。様式的に見れば、それはレアリスム(写実主義/自然主義)に対する反発であったと言えるが、その背後には同時代の実利的な価値観の下での芸術の卑俗化に対する懸念があったと言えよう。同様の傾向はフランス国内にとどまらず、世紀転換期のベルギーやオーストリアなどヨーロッパ各国に飛び火した。また、19世紀半ばのイギリスで興ったラファエル前派(ロセッティ、ハント、ミレイ)は、その態度や様式上の類似からサンボリスムの先駆と見なされている。
補足情報
参考文献
『象徴主義 モダニズムへの警鐘』,中村隆夫,東信堂,1998
『象徴主義と世紀末芸術』,ハンス・H・ホーフシュテッター(種村季弘訳),美術出版社,1987