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シンボル

Symbol
更新日
2024年03月11日

象徴のこと。最も一般的な定義を与えるならば、「シンボル」は「記号(sign)」の一種である。しかしそこに含まれる意味内容は、時代や文化によってかなりの振れ幅がある。そこで以下では、その代表的な議論のみを挙げることにする。(1)第一に、シンボルはC・リーパによって体系化された西洋の図像学における重要な要素である。たとえば鷲によってゼウスを、梟(フクロウ)によってアテナを表現する手法は「アトリビュート(属性)」と呼ばれるが、これは図像としてのシンボルの典型的な使用例である。また、国家や王家を国旗や紋章によって代理表象することも、同じく図像としてのシンボルの用例に含まれる。(2)第二に、18世紀以降のドイツにおいて、シンボルは重要な哲学的概念として位置づけられる。例えばカントは、非感性的なものである理念を間接的な仕方で表示する像として「シンボル(独:Symbol)」を定義している。ドイツにおけるこの種の議論は、カントとほぼ同時代のヘーゲル、ヘルダー、シェリングから、カッシーラーの『シンボル形式の哲学』にまで受け継がれている。(3)第三に、記号論の始祖であるCh・S・パースの分類に従えば、類似記号である「イコン」、指標記号である「インデックス」に対し、指示対象との直接的な結びつきを持たず、その送り手と受け手とのあいだで共有される規約によって流通する記号が「シンボル」に相当する。以上のパースの分類によれば、シンボルの典型例は言語である。(4)精神分析家のJ・ラカンは、人間の言語活動の水準を「象徴界(仏:le symbolique)」と名づけ、これを「現実界」「想像界」から区別した。以上を踏まえて再度定義を試みるならば、「シンボル」とは人為的な規約に基づく記号の典型であり、抽象的な概念・理念・思想などを感性的(ないし言語的)に伝達するものであると言うことができるだろう。

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補足情報

参考文献

『象徴の美学』,小田部胤久,東京大学出版会,1995
『美学辞典』,「象徴」,佐々木健一,東京大学出版会,1995
Vocabulaire européen des philosophies,“Signe”,Barbara Cassin ed.,Seuil/Le Robert,2004