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女流美術家奉公隊

Joryu Bijutsuka Houkoutai
更新日
2024年03月11日

太平洋戦時下に組織された女性美術家たちの団体。1943年2月、陸軍報道部の指導のもと、洋画家長谷川春子を委員長に、藤川栄子、三岸節子、桂ゆき、日本画家の谷口富美枝ら50名によって結成された。参加者は、日本画と洋画の垣根を超え、新文展、国画会、二科会、独立美術協会、新制作派協会、一水会など、官展・在野問わず多くの美術団体から集まった。活動の皮切りに、同年3月に東京・銀座の日本楽器画廊で「女流美術家奉公隊」展を開催した。同年9月に「戦う少年兵」展を開催し、これは新宿三越、神戸大丸、大阪大丸、京都大丸へと巡回した。こうした展覧会の主な鑑賞者として想定されていたのは、少年を戦地に送る母親であり、母親を鼓舞することで結果として兵士を増やすことが意図されていた。また、奉公隊は一般の労働者と同じく工場での勤労奉仕というかたちでも労働力を国家に提供したことに加え、44年3月の陸軍美術展に出品した《大東亜戦皇国婦女皆勤の図》という巨大な共同制作でも知られる。この作品はもともと三部作であったが、《春夏の部》(240×300cm)と《秋冬の部》(185.7×298.5cm)の2作品のみが現存する。当時の新聞雑誌に掲載された女性の労働の光景をコラージュしたこの作品は、銃後を生きた女性たちの自画像でもあったと指摘されている。

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補足情報

参考文献

『戦争と美術 1937-1945』,針生一郎、椹木野衣ほか,国書刊行会,2007
『戦争と女性画家 もうひとつの近代「美術」』,吉良智子,ブリュッケ,2013