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崇高

Sublime
更新日
2024年03月11日

伝統的な美学的カテゴリー(美的範疇)のひとつ。一般的には、巨大な対象、恐ろしい対象、曖昧な対象などを目にした際の人間の感情に結びつけられる。

18世紀以降、この「崇高」という美的範疇はしばしば「美」の対概念と見なされてきた。エドマンド・バークによる『崇高と美の観念の起源』(1757)は、「美」を喚起する属性として対象の小ささ、柔和さ、明瞭さなどを挙げる一方、「崇高」を特徴づけるものは対象の巨大さ、恐ろしさ、曖昧さなどであるとした。バークの議論に影響を受けたカントもまた、『判断力批判』(1790)において「崇高」を「美」と対照的かつその付随的なものとみなしている。バークやカント、ひいてはそのはるか遠い起源に当たる偽ロンギノスの崇高論は、20世紀後半に哲学や批評理論の分野でふたたび脚光を浴びることになり、美学や美術批評の周辺でも大いに流行した。その代表例として、ロバート・ローゼンブラムの「抽象的崇高」(1961)やジャン=フランソワ・リオタールの「崇高と前衛」「瞬間、ニューマン」(1985)などを挙げることができる。上記の例に顕著なように、18世紀のロマン主義的な「崇高」が主に自然をその対象としていたのに対し、20世紀後半の「崇高」は主にアメリカの抽象表現主義の作品を賞賛するに当たって用いられていた。また、アーティストのなかでも「崇高」という言葉に特別なこだわりをもった者は少なくなく、バーネット・ニューマン、ロバート・スミッソン、マイク・ケリーらが著作や展覧会タイトルなどにおいてこの言葉を用いている。

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補足情報

参考文献

『非人間的なもの──時間についての講話』,ジャン=フランソワ・リオタール(篠原資明、平芳幸浩、上村博訳),法政大学出版局,2002
『判断力批判(上・下)』,イマヌエル・カント(宇都宮芳明訳),以文社,2004
『崇高と美の観念の起原』,エドマンド・バーク(中野好之訳),みすずライブラリー,1999

参考資料

英雄にして崇高なる人,バーネット・ニューマン,1950-51
海辺の僧侶,C・D・フリードリヒ,1810