ソーシャルデザイン
- Social Design / Design for Society
- 更新日
- 2024年03月11日
ソーシャルデザインという言葉が指す活動には「デザインあるいはデザインの手法によって社会に貢献すること」と「社会のありかたをデザインすること」というふたつのアプローチがある。いわゆるコマーシャルデザインが主に企業の営利活動を目的とした課題解決であるのに対して、ソーシャルデザインの目的は社会的な課題の解決である。
1970年代以降、ヴィクター・パパネックの著作を嚆矢として、企業のためのデザインではなく社会のためのデザインの可能性が人々の耳目を集め始め、21世紀になりその動きは加速する。2007年にクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館で開催された「残りの90%のためのデザイン」展は、低開発地域に暮らす人々のライフスタイルを改善するためのさまざまなプロダクトによってデザインの持つ可能性を示し、大きな反響を呼んだ。ソーシャルデザインの担い手は主にNPOなどのボランタリー活動だが、ソーシャルビジネス、BOP(Bottom of the Pyramid)ビジネスなど、経済原理にかなった仕組みを構築することで、社会的な課題を持続的に解決しようという試みも行なわれている。
モノのデザインを通じた課題解決へのアプローチでは、現状の社会環境を所与とした短期的な解決策の提案が中心となる。他方で対象とする社会の長期的な発展を見据えると、課題を生み出してきた社会や経済の構造自体を変えていく必要が見えてくる。ソーシャルデザインのもうひとつのアプローチ「社会のありかたをデザインすること」は、ここに関わってくる。
補足情報
参考文献
『生きのびるためのデザイン』,ヴィクター・パパネック(阿部公正訳),晶文社,1974
『人間のためのデザイン』,ヴィクター・パパネック(阿部公正、和爾祥隆訳),晶文社,1985
『世界を変えるデザイン──ものづくりには夢がある』,シンシア・スミス編(北村陽子訳、槌屋詩野監訳),英治出版,2009
『ソーシャルデザイン・アトラス──社会が輝くプロジェクトとヒント』,山崎亮,鹿島出版会,2012
『世界を変えるデザイン2──スラムに学ぶ生活空間のイノベーション』,シンシア・スミス編(北村陽子訳),英治出版,2015