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デッサン

Dessin(仏)
更新日
2024年03月11日

デッサンとは、主にペンや木炭などで対象を描く習作を指し、油彩などを用いて念入りに描く完成作(=タブロー)とは区別される。「デッサン」という言葉はフランス語のdessinに由来し、イタリア語ではdisegno、英語ではdrawingがよく似た意味をもつ。もともとは美術アカデミーで教えられる石膏・人体の素描、もしくはタブローの下絵をデッサンと呼んでいた。しかし20世紀初頭にロダンやセザンヌが即興的な線描を用いて直観的な印象を表現したデッサンを発表し、それらが世人の注目を集めたことで、下絵から独立した価値を持つ無彩色の即興画の総称となった。日本では19世紀末から「デツサン」というカタカナ語が用いられると同時に、「墨絵」や「素描(すがき)」と訳されていた。20世紀初頭には美術雑誌でデッサンの特集が組まれるようになり、即興的なデッサンが日本でも主流になった。デッサンは材料や技法にとらわれずに印象をそのまま表現できることから、最も原始的で根源的な創作行為と考えられてきた。同時に、美術教育の基礎訓練としてもデッサンは推奨されてきた。この場合では、対象を見たまま正確に描くというアカデミックな価値観が色濃く残っている。今日でも、美術の基礎訓練として多くの美術大学が入試にデッサンを課しており、美術予備校ではデッサンは主要なカリキュラムになっている。19世紀前半まではクロスハッチングによる明暗表現が主流だったが、19世紀後半には擦筆によるぼかし技法が取って代わり、のちに即興的な線描が主流となった。今日では、デッサンという言葉が指し示す技法は拡大し、コラージュや色彩画も含めて、直観的なイメージを記録する行為を総称してデッサンと呼ぶ場合もある。

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参考文献

『アカデミーとフランス近代絵画』,アルバート・ボイム(森雅彦、阿部成樹、荒木康子訳),三元社,2005
『洋画手引艸』,森鴎外ほか,画報社,1898