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ドラマトゥルク

Dramaturg(独)
更新日
2024年03月11日

ドラマトゥルク(英語読みでドラマターグとも)は舞台芸術における職分で、劇場やカンパニー(劇団など)、あるいは個々の公演の創作現場において生じるあらゆる知的作業に関わり、そのたびごとにサポート、助言、調整、相談役などの役割を果たす。各職能(演出、舞台美術、照明など)の担当者と異なり、ドラマトゥルクはあらゆる職能に関して決定権を持たないが、他のすべての職分と対等な立場で意見の交換を行なう。また、常に創作の全体に目を配ることで「外の目」として機能することが求められる。演劇や文学のみならず哲学や科学など、それぞれが持つ演劇外の専門知識によっても創作に貢献する。
劇作家ゴットホルト・エフライム・レッシングがその起源と見なされ、18世紀後半以降、ドイツの劇場を中心に発達した。ドイツ語圏では劇場監督(芸術監督)らとともに運営の中心を担うスタッフとして劇場に所属することがほとんどで、年間プログラムの選定から個々の演目の創作、あるいはアウトリーチ活動まで劇場のあらゆる活動に関わる。
劇場のシステムがドイツほどには発達していない日本では、ドラマトゥルクは特定のカンパニーに所属するか、あるいはフリーとして公演ごとに仕事を請け負うかたちで活動している。自らカンパニーを主宰しプロデューサー的な役割も担う木ノ下裕一(公演におけるクレジットは監修・補綴)や2018年にフェスティバル/トーキョーのディレクターに就任した長島確など、より幅広い活動を展開するドラマトゥルクも登場してきているが、2019年現在、日本のドラマトゥルクの状況はいまだ発展途上の段階にあるといえる。

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補足情報

参考文献

『ドラマトゥルク──舞台芸術を進化/深化させる者』,平田栄一朗,三元社,2010
『演劇学のキーワーズ』,「ドラマトゥルク(ドイツにおける)」平田栄一朗,佐和田敬司、藤井慎太郎、冬木ひろみ、丸本隆、八木斉子編,ぺりかん社,2007
『演劇学のキーワーズ』,「ドラマトゥルク(日本における)」長島確,佐和田敬司、藤井慎太郎、冬木ひろみ、丸本隆、八木斉子編,ぺりかん社,2007