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ナイーヴ・アート/素朴派

Naïve Art
更新日
2024年03月11日

正式な美術教育を受けたことのない作家によって制作され、独学ゆえにかえって素朴さや独創性が際立つ作品をさす。ナイーヴ・アートの作家は、独学で手法や構成を学び、ほかの職業で生計を立てながら、個人的な楽しみとして制作している場合がほとんどである。近年では、75歳になってから農民や田園風景を描き始めたグランマ・モーゼス(アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス)が有名だが、それまで彼女は農業に従事していたという。ナイーヴ・アートの特徴としては、明るい色彩や具象的で緻密な描写、空間表現の平坦さなどが挙げられる。この動向は、20世紀初頭にピカソやルノアールをはじめとするパリの芸術家が、税関に勤めながら展覧会に出品していたアンリ・ルソーの絵画を評価したところから始まった。そしてモダニズムの作家たちによる素朴な形態や様式の援用(プリミティヴィズム)や、抽象表現主義の発展とともに、ナイーヴ・アートは現代美術の動向のひとつとして認められるようになった。ほぼ同じ意の用語として「アウトサイダー・アート(英)」や「アール・ブリュット(仏)」がある。これは、狭義には精神病患者や囚人が生み出す作品を指す場合が多く、近年、ヘンリー・ダーガーが紹介されたことにより周知された。

補足情報

参考文献

『アウトサイダー・アートの世界 東と西のアール・ブリュット』,はたよしこ,紀伊國屋書店,2008
「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢 アンリ・ルソーと素朴派、ルソーに魅せられた日本人美術家たち」展カタログ,東京新聞,2006
『ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で』,ジョン・M・マグレガー(小出由紀子訳),作品社,2000