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ネオ・ジオ

Neo-Geo(Neo-Geometric Conceptualism)
更新日
2024年03月11日

「ネオ・ジオメトリック・コンセプチュアリズム」の略称。1980年代後半より、幾何学的で明解な造形性を特徴とし、後期資本主義経済や高度情報産業社会の表象のアプロプリエーションないしシミュレーションを戦略的に活用した作家たち、特にP・ハリー、J・クーンズ、A・ビカートン、M・ヴァイズマンを中心とする動向のこと。そもそもこの用語は86年にNYのソナベンド・ギャラリーが彼ら新進作家を売り出すために掲げた商業的なネーミングとしての性格を持っていた。新表現主義(ニュー・ペインティング)とほぼ同時期に登場したが、冷徹な形式性と既存の表象やレディ・メイドを頻繁に用いる非人称的な造形性によって前者とは対照的な傾向を備えている。特に、思想家J・ボードリヤールのハイパー・リアリティやシミュラークルの議論を参照し、格子や幾何学的図形を用いて情報回路や監獄のシミュラークルな表層をなぞるP・ハリーの抽象的な絵画は、ネオ・ジオの名称に適う代表的な例といえる。しかし、それぞれの作家が独自の活動によって名声を博した90年代以降はやや回顧的な用語と化し、積極的に用いられることは少ない。

著者

補足情報

参考文献

The Return of the Real: Art and Theory at the End of the Century,Hal Foster,The MIT Press,1996