ノンフィギュラティヴ
- Non-figurative
- 更新日
- 2024年03月11日
具象(Figurative)に対して、非具象、非形象を意味する。西洋絵画において「ノンフィギュラティヴ(Non-figurative)」は、具体的な対象を単純な要素に還元して表現する「抽象」と同意に用いられることも多い。しかし第二次世界大戦前から1960年代にかけて発表されてきたノンフィギュラティヴの作品は、どちらかと言えば、シュルレアリスムがテーマにした無意識や精神世界を表現し、その影響を受けているものが多いといえよう。やがてノンフィギュラティヴは、アメリカの抽象表現主義、ヨーロッパではアンフォルメルの流れとなり、個々の作家はそれぞれ描く形や技法にオリジナリティを見出していった。当時開発されたアクリル絵具が、彼らの表現の幅を広げたことも一因であろう。こうした動きは、西洋絵画だけにとどまらない。彫刻では、キュビスムや構成主義といった時期から現代まで、不定形なフォルムや幾何学的なオブジェが多く見受けられる。版画においても、戦前から恩地孝四郎らが抽象的な表現を多用してきた。また日本画や書画の世界でも、50年代から「前衛」と呼ばれたノンフィギュラティヴな表現が見られる。書家の井上有一は50年代に文字を書くのではない抽象的な書をドクメンタやサンパウロ・ビエンナーレで発表をしている。
補足情報
参考文献
「戦後日本美術の展開 抽象表現の多様化」展カタログ,東京国立近代美術館,1973