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ハイテック建築

High-tech Architecture
更新日
2024年03月11日

後期モダニズム建築、または構造表現主義とも呼ばれるハイテック建築は、1970年代後半に生まれた建築様式で、80年代に、特にヨーロッパと北アメリカで流行した。名称はデザイン・ジャーナリストのジョアン・クロンとスザンヌ・シュレシンの共著『High Tech: The Industrial Style and Source Book for the Home』(1978)に由来する。画一的なモダニズム建築の氾濫に対する反動により生まれたハイテック建築は、工業製品に倣ったモダニズム建築の手法をさらに展開させ、目に見えやすいかたちで科学技術の進歩を実感していた時代背景のもと、よりダイレクトに工業製品や技術を表現することで、新たな美的価値観を産み出そうとした。それまで下地の中に隠されていたボルトやナット、構造部材や設備ダクトなどを建築物の内外に露出させ、時にはそれらの材料は何の機能も持たないことさえあった。機能主義から逸脱し、モダニズム建築が否定した装飾を取り入れた一方、モダニズムが目指した機械としての建築に最も近づいたハイテック建築は、モダニズム建築とポストモダン建築のあいだに位置する建築様式であるが、特に80年代のハイテック建築は、ポストモダン建築と明確に線引きすることは難しい。ノーマン・フォスターの《香港上海銀行・香港本店ビル》(1985)、リチャード・ロジャースとレンゾ・ピアノの共同設計による《ポンピドゥー・センター》(1977)がハイテック建築を象徴する建築物であり、そのほかマイケル・ホプキンス、サンティアゴ・カラトラヴァらがハイテック建築の先駆者として知られている。

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参考文献

Hi-Tec Architecture,Daab Publishing,2009
High-Tech: The Industrial Style and Source Book For the Home,Joan Kron,Suzanne Slesin,Clarkson Potter,1984