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「美術にぶるっ! ベストセレクション日本近代美術の100年」展 

Art Will Thrill You!: The Essence of Modern Japanese Art
更新日
2024年03月11日

2012年10月、東京国立近代美術館の開館60周年を記念して開催された大型の企画展。通常は常設展に使われている部分も含めて本館の全4フロアを企画展として潤沢に使い、日本近代美術のスタンダードな総体を示しつつ新たな書き換えを行なった。同展図録によると、「ぶるっ!」というタイトルには、「誰しもがそれぞれに体験し得る、美術作品との貴重な出会いの瞬間への思いが込められて」いる。同館は、1952年に京橋に開館し、1969年に谷口吉郎設計の建物で竹橋に再開館した。2002年の開館50周年における増改築の披露を兼ねた「未完の世紀 20世紀美術がのこすもの」展では、同様に全フロアを使って日本近代美術史を通覧している。「美術にぶるっ!」展は、西澤徹夫が設計を手掛けた館リニューアルの披露でもあり、重要文化財など近代美術のエッセンスを集めた「ハイライト・コーナー」、照明を工夫した「日本画コーナー」、皇居を眺める「眺めのよい部屋」、新しい壁と什器などのデザインも見所であった。展覧会の内容としては、同館所蔵品によって通史的に展開する「第1部:MOMATコレクションスペシャル」と、多くの所蔵者から作品や資料を借り集めて同館が誕生した時代を深く掘り下げる「第2部:実験場1950s」の二部構成となっていた。祝祭的・教科書的な第1部とは対照的に、第2部は、敗戦・占領期から高度経済成長へと至る時代の暗部に焦点を当てたもので、社会派的なドキュメンタリー写真・映画、ルポルタージュ絵画などが大きく取りあげられた。

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補足情報

参考文献

『美術にぶるっ! ベストセレクション日本近代美術の100年』,東京国立近代美術館,NHKプロモーション,2012
『戦争/美術 1940-1950 モダニズムの連鎖と変容』,神奈川県立近代美術館,2013