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《魔女の踊り》マリー・ヴィグマン

Hexen Tanz(Witch Dance), Mary Wigman
更新日
2024年03月11日

ドイツのモダン・ダンス(「表現舞踊」とも言う)の振付家・ダンサーのマリー・ヴィグマンが創作したソロ作品。本作のもっとも顕著な特徴は尻を床についた状態で踊ることであり、ヴィグマンは足を繰り返し床に叩きつけながら移動し、ポーズをとる。よく知られている1926年のヴァージョンでは、ヴィグマンは顔に仮面を被っているが、14年の最初のヴァージョンでは、上半身は衣裳で覆われながらも顔は露出していた。ヴィグマンは仮面について、スフィンクスを連想しながら、多様な表情を示すその計り難さとともに動物性を重ね合わせている。また、「魔女」というモチーフについて「地上を這いまわり続ける赤裸々な本能と生への飽く無き欲望の生き物、獣と女性が一体となりまたその両方でもある」存在として魔女をとらえている。ダンス研究者のスーザン・マニングは仮面や体の輪郭線を消す衣裳を指して、本作のなかにジェンダーを曖昧にし目立たなくさせる側面があると解釈する一方、同じくダンス研究者のサリー・ベインズは魔女というドイツでよく知られた存在のもつ独自の女性性を本作のなかに見ている。また能に似た打楽器の使い方や歌舞伎の見得に類似するポーズが見られるなど、日本の伝統芸能との類似性が指摘されている。

著者

補足情報

参考文献

Dancing Women: Female Bodies on Stage,Sally Banes,Routledge,1998
Ecstasy And the Demon: Feminism and Nationalism in the Dance of Mary Wigman,Susan A. Manning,University of California Press,1993
『バレエとモダン・ダンス その歴史』,ジャック・アンダソン(湯河京子訳),音楽之友社,1993(原著1986)