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「無限発展の美術館」ル・コルビュジエ

“Musée à croissance illimitée”, Le Corbusier
更新日
2024年03月11日

建築家ル・コルビュジエが構想した美術館のプロトタイプ。その出発点は1929年のスイス・ジュネーヴに計画された、螺旋のスロープを頂部まで登る「ピラミッド状の螺旋型」の世界文化センター「ムンダネウム」計画にあるとされる。「無限発展の美術館」の具体像が示されたのは、ル・コルビュジエがクリスチャン・ゼルヴォスに対して30年2月19日付けで送った書簡である。ゼルヴォスが編集長を務めた『カイエ・ダール』誌31年1月号に掲載された「パリ現代美術館」計画は、螺旋型の動線を導入しており「無限発展の美術館」のベースとなった。ル・コルビュジエはその後研究を重ね、39年に発表した北アフリカの「フィリップヴィル美術館」計画案を「無限発展の美術館」と名付けたが、この美術館計画は特定のファサードをもたず、内部に螺旋状の回廊をもち可動間仕切りによる自由な分割が可能であり、渦を大きくすることで展示品の増加に対応した増床可能な平面計画を特徴とした。柱や梁、天井、昼間・夜間採光のエレメントすべてが黄金比をもとに標準化された「展示のための機械」であり、陸屋根、正方形の平面形状、ピロティー、屋上庭園、斜路、自然光を利用した照明計画など、ル・コルビュジエに特徴的な設計要素が随所に見られた。「無限発展の美術館」の実現例としては《アーメダバード美術館》《チャンディガール美術館》《国立西洋美術館本館》がある。

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参考文献

『ムンダネウム』,ル・コルビュジエ、ポール・オトレ(山名善之、桑田光平訳),筑摩書房,2009
Chandigarh et Le Corbusier: Création d’une ville en Inde,1950-1965,Rémi Papillault,Editions Poïési,2013
Le Corbusier Pierre Jeanneret: L’aventure indienne,design–art–architecture,Eric Touchaleaume,Gerald Moreau (ed.),Gourcuff Gradenigo,2011