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メディア考古学

Media Archaeology
更新日
2024年03月11日

メディア考古学とは、エルキ・フータモの主張に即して言えば、メディア文化とその体験の過去と現在を対話させるための研究アプローチである。フータモのメディア考古学概念にもっとも強く影響を与えたのは、E・R・クルティウスが『ヨーロッパ文学とラテン中世』で展開した「トポス」概念である。フータモは詩や文学における定型表現であるトポスを視覚・言説レベルにも敷衍し、時空を超えてメディア文化・体験に繰り返し現われるテーマ等を──文化的コンテクストに留意しつつ──分析している。 フータモの問題意識は次の三つに大別できるように思われる。一つ目は、しばしばメディア研究の賭け金となる「新しさ」への批判である。二つ目は、メディア文化・体験の連続性である。切断を重視するフーコー的な議論からは距離を置き、フータモは豊富な資料や実例からメディア文化・体験の連続性を強調する。とはいえ、それは単純な実証主義的態度ではないことには注意すべきである。三つ目は歴史の複数性である。例えば、フータモは、映画以前の光学装置を素朴に映画前史として押し込める直(単)線的・目的論的発展史観を拒絶し、それらが映画とは異なるメディア文化・経験を織りなしていると主張する。以上を背景に、フータモは、トポスを複数の流れが合流・分岐する「場」としても捉え直し、過去を掘り起こして現在との対話を試みるのである。なお、メディア考古学に関しては、統一的なディシプリンや合意が形成されているわけではない。その内実や研究対象も研究者によりさまざまであることは指摘しておく必要があるだろう。

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参考文献

Media Archaeology: Approaches,Applications,and Implications,Erkki Huhtamo + Jussi Parikka
Illusions in Motion: Media Archaeology of the Moving Panorama and Related Spectacles,Erkki Huhtamo,The MIT Press,2013
What is Media Archaeology?,Jussi Parikka,Polity,2012
『ケータイ研究の最前線』,「モバイルメディアの考古学」,エルキ・フータモ(吉岡洋訳、日本記号学会編),慶應義塾大学出版会,2005
『絵画と私的世界の表象』,「家庭こそメディアの場所である」,エルキ・フータモ(太田純貴訳、中村俊春編),京都大学学術出版会,2012
『ヨーロッパ文学とラテン中世』,E・R・クルツィウス(南大路振一、中村善也、岸本通夫訳),みすず書房,1971