木版/ウッドカット
- Woodcut
- 更新日
- 2024年03月11日
凸版の代表的技法。版に木を用いる版画には板目木版と木口木版があるが、通常「木版」と称するときは前者を指す。版木にはさまざまな木材が使用され、インクの油性水性を問わない。印刷はバレンなどで摺る場合とプレス機にかける方法がある。あらゆる版画のなかで最も歴史が古く、年代が分かっている最古の木版画は敦煌で発見された869年の仏像画とされる。東洋における木版技法の長い伝統が最高潮に達したのが浮世絵で、職人の分業によって数々の独自で高度な表現技術を生んだ。その技術は失われたものも多く、20世紀に入って登場した創作版画運動は職人的分業からの離脱を加速させた。西欧で現存する最古の版画は14世紀後半のもの。西洋では製紙術の伝播、そして活版印刷の普及に伴って挿絵用として15世紀後半に広まった。基本的に図や陰影を線で表現する西洋の木版には熟練の技術が必要とされ、その代表的な作者の一人が、金属版画でも多くの傑作を残したA・デューラーである。19世紀末にはゴーギャン、ムンクなどが職人的技術よりも木版ならではの素朴さを活かした優品を制作し、20世紀初頭のドイツ表現主義も力強い作品を数多く生み出した。また、手軽さと力強さの両面から20世紀までのプロレタリア美術運動において活用され、中国の木刻画運動は日本にも波及した。戦後の日本で同時代の国際的評価を受けた代表的な作家の一人が棟方志功であったように、木版は非西欧、特にアジアと結びつけられてきた技法といえる。
補足情報
参考文献
『版画事典』,室伏哲郎,東京書籍,1985
『改訂版 版画の技法と表現』,町田市立国際版画美術館編,町田市立国際版画美術館,1991
「日本の木版画1200年:奈良時代から平成まで 版画王国・ニッポン」展カタログ,町田市国際版画美術館,1998
『木版画の楽しみ』,関野準一郎,平凡社,1983
「野に叫ぶ人々 北関東の戦後版画運動」展カタログ,栃木県立美術館,2000