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モダニズム

Modernism
更新日
2024年03月11日

近代主義。「モダニズム」の元になる「モダン(modern)」ないし「モダニティ(modernity)」という言葉は、時代区分としてみれば、数度の大きな市民革命を経た18世紀末からおおよそ20世紀前半までの西洋を指すことが一般的である。しかし同時にこれらの言葉には、その発話主体が属する「今」「現在」「同時代」という意味もある。したがって、同じくモダニズムという言葉についても、(1)特定の時代区分としての「近代」を標榜する態度や様式、(2)同時代的な「新しさ」を標榜する態度や様式という二つの含意があることを念頭に置いておく必要がある。ある特定の建築や文学に対して用いられる「モダニズム」という言葉には前者の含意があるが、絵画をはじめとする芸術の領域においてしばしば問題となるのはむしろ後者である。なぜなら広義のモダニズムの本質は、先行するスタイルの拒絶と、いまだ存在したことのない新しいスタイルの追求にこそ見出されるからである。したがってその定義上、絶え間ない発展によってつねに「新しい」ものであることを求めるモダニズムは、いわゆる「前衛(アヴァンギャルド)」の理念とほぼ重なり合うものである。しかし同時に、20世紀に広く議論の対象となったモダニズムは、19世紀半ばのパリ、すなわちボードレールの「現代生活の画家」をはじめとする時評的テクストや、エドゥアール・マネ、ギュスターヴ・クールベらの絵画作品をその起源とする。批評家クレメント・グリーンバーグは、絵画におけるモダニズムを「平面性」という絵画に固有の性質(メディウム・スペシフィシティ)の探求として位置づけ、20世紀アメリカの抽象表現主義の作品をその系譜に連なるものであるとした。このような意味において、モダニズムという理念そのものが、いまやある特定の歴史性を帯びたものに転じているという事実は否定できない。

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参考文献

『ボードレール批評2』,シャルル・ボードレール(阿部良雄訳),ちくま学芸文庫,1999
『グリーンバーグ批評選集』,クレメント・グリーンバーグ(藤枝晃雄編訳),勁草書房,2005
『美術史を語る言葉』,「モダニズム」,チャールズ・ハリソン(米村典子訳),ブリュッケ,2002