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モデュール

Module
更新日
2024年03月11日

モデュールとは、建築設計等において用いられる基準寸法のこと。基準となる寸法を、一定の規則に基づき、さまざまなスケールに展開した寸法表や寸法体系を指す場合もある。モデュールを用いて建物を設計するという考え方自体は、西洋のオーダーや日本の木割に見られるとおり、洋の東西を問わず古くから存在していたが、近代以降のものでとりわけ有名なのが、ル・コルビュジエが1940年代に考案した「モデュロール」である。ル・コルビュジエは、人間の身体から割り出した基準寸法を、黄金比と関連が深いフィボナッチ数列を用いて展開し、そうしてできた寸法体系であるモデュロールを用いることで、建築ばかりか、家具から都市に至るまで、あらゆるものが有機的に連関し、美的にも機能的にも調和すると主張した。また、モデュロールは、当時台頭しつつあった建築や製品の工業化を意識したものでもあり、ル・コルビュジエは、これらがモデュロールに基づいて設計されることによって、その生産が合理化されると考えた。モデュロールは、黄金比を用いた寸法体系であるため、寸法が端数を含む複雑なものになるなどの欠点があり、実際に普及することはなかったが、モデュロールが建築界にもたらしたインパクトは大きく、その後、モデュール研究は国際的にも活発に行なわれることとなる。日本においては、池辺陽によるGMモデュールや内田祥哉によるDφモデュールが、50年代後半に考案された。しかし、こうしたモデュール研究は、建築生産の工業化や規格化に対応するという意識に強く根ざしたものであり、建築生産の工業化や規格化が否定的なニュアンスを帯びる70年代には、同じく沈滞化していくことになる。

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参考文献

「モデュールの現在」,『建築の四層構造 サステイナブル・デザインをめぐる思考』,難波和彦,INAX出版,2009