バックナンバー
2009年10月15日号のバックナンバー
フォーカス
美術館のこれから──今秋以降のリニューアルについて
[2009年10月15日号(暮沢剛巳)]
俗に「美術の秋」という。美術の制作や鑑賞は季節を問わず可能なはずなのに、なぜ秋が特権視されるのかは詳らかにはしないが、恐らく、暑い夏や寒い冬に比べて過ごしやすく制作にも鑑賞にも適しているとか、日展をはじめとする大型の団体展が秋に集中しているなどの理由によって定着した物言いなのだろう。
そんな「美術の秋」にふさわしく、このほど山種美術館と根津美術館がリニューアルオープンした。どちらも日本画や古美術を主体とした老舗の館であり、現代美術を主なフィールドとする私には平素あまり縁がないのだが、せっかくの好機でもあり、出かけてみることにした。
キュレーターズノート
アートイン木町プロジェクト『つなぐ』'09──山口盆地午前五時/「Moids 2.0 - acoustic emergence structure」展
[2009年10月15日号(阿部一直)]
山口市で活動するNPO法人YICAが中心となって、市内にある木町ハウスにアーティスト・イン・レジデンスを行なった成果展示が、市内の菜香亭で行なわれた。YICAは、98年にNPOとしてスタートするが、その運営はその10年以上前から地道に行なわれており、トマス・シュトゥルート、ダン・グレアム、ジャン・マルク・ビュスタモン、デヴィッド・ハモンズ、アラン・ジョンストンといった大御所を始め、国内外のアーティストを定期的に山口に招いてレジデンスを行なうなど、継続した活動を行なってきている。またスコットランドのエジンバラと長年にわたって、パトリック・ゲデス(1854-1932)に関する環境文化哲学の研究や人材交流を行なう「エジンバラ−山口」などを実施していることでも知られている。
チルドレンズ・アート・ミュージアムin大原美術館 コレクション/コネクション──福岡市美術館の30年 現代美術も楽勝よ。
[2009年10月15日号(坂本顕子)]
九州でもようやく秋の足音が聞こえはじめたが、まだまだ夏の残り日のような強い日差しが続く。今年の夏休みは、各所で非常にレベルの高い、子どもや市民を巻き込むかたちでの教育プログラムを見ることができた。遅い夏休みの宿題として、印象深い3つの館の活動について報告したい。
アート・アーカイブ探求
東洲斎写楽《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》哀感にじむアンバランスな魅力──「浅野秀剛」
アートプロジェクト探訪
広島アートプロジェクト2009──アーティストが自らの場を拓く
[2009年10月15日号(白坂由里)]
アートというきっかけがなければ、おそらく訪れることのない「普段着」の街を巡る。広島市現代美術館学芸員、角奈緒子氏のレポート(artscape 2009年9月15日号参照)にもあった広島アートプロジェクト2009「いざ、船内探険! 吉宝丸」展(2009年9月5日〜23日)を訪ねた。広島市立大学芸術学部で教鞭を執るアーティストの柳幸典がディレクターを務め、学生や卒業生を中心に運営する「広島アートプロジェクト」は、3年目を迎え、広島市の郊外、中区吉島(よしじま)地区に定着しつつある。2007年、産業遺構の遊休施設を再利用する「アートセンター構想」を掲げて始まったプロジェクト。アーティストが自らの発表の場を拓くアートプロジェクトについて考えたい。
ボーン・デジタルの情報学
第2回:巨人の肩の上に立つ
[2009年10月15日号(大向一輝)]
前回、「学術分野においては、研究者はアーカイブを活用し、また自身の成果をアーカイブに加えることが死活的に重要である」と述べた。
無論、アーカイブとの関連が深いのは学術分野だけではない。どの分野においても過去の貴重な資料・作品を保存するためのアーカイブは多数存在している。しかし、学術分野のアーカイブは保存目的ではなく、研究者が「いま」それを使わなければ職能をまっとうできないという点で、他の分野と一線を画していると筆者は考えている。それでは、研究者はどのようにアーカイブと関わっているのだろうか。