バックナンバー
2010年02月15日号のバックナンバー
フォーカス
医学と芸術:生命と愛の未来を探る──ダ・ヴィンチ、応挙、デミアン・ハースト(森美術館)
[2010年02月15日号(柳澤田実)]
今日、自然や生命、さらにはより局所的に脳という臓器への関心が高まるなかで、哲学や芸術など近世以降自然科学と分岐し自律的に展開していった領域が、改めて自然科学、とりわけ経験科学とプロダクティヴな関係を取り結ぶことを課題としている。本展覧会もまた、こうした流れにおける重要な問題提起であり、一旦分かれてしまった医学と芸術がかつていかなる関係を結び得たのか、あるいはこれから結び得るのかについて、深く考えさせられる内容となっている。
キュレーターズノート
絵画の庭──ゼロ年代日本の地平から
[2010年02月15日号(植松由佳)]
筆者が勤務する国立国際美術館が大阪の中心地である中之島に移転して5年になる。とはいえ自身が大阪に勤務するようになったのは1年4カ月ほど前からであるのだが、以前の万博記念公園内に位置した時に見た数々の展覧会も強く記憶に残ってもいる。その国際美術館の新築移転5周年記念として4月4日まで開催されているのが「絵画の庭──ゼロ年代日本の地平から」と題された特別展である。
‘文化’資源としての〈炭鉱〉展
[2010年02月15日号(山口洋三)]
──近代絵画は虚像の表現論にいろどられながら、かろうじて自立の道を開いてきた。しかし近年における絵画状況は、ますます業界化し、観念化し、作為だらけの八百長の舞台ばかりに終始して、人間や社会の隠された構造と正面から切り結ぶことに背を向けてしまっている。「虚像」の表現論は今や想像自体を虚像にしてしまいつつある。彼の画業の持つ意義は、今日の絵画が抱きしめてきた「虚像」の最も軟弱な部分に対して肉迫しているのである。(菊畑茂久馬「自棲の秘術」)
アート・アーカイブ探求
歌川広重《蒲原 夜之雪》静寂なる日本の詩情──「森山悦乃」
アートプロジェクト探訪
東京文化発信プロジェクト──アートプロジェクト・インストラクターの糧を生成する
[2010年02月15日号(久木元拓)]
アートプロジェクト探訪も連載開始からようやく1年を迎えようとしている。これまでいくつかの都市のアートプロジェクトをとりあげてきたが、ここで満を持して東京でのプロジェクトについて考えてみたい。そこで今回本連載は若干の変則的な展開となる。今号(2月15日号)では、東京のアートプロジェクトを考えていくうえでその基盤となる東京都が推進する「東京文化発信プロジェクト」を、人材育成などの政策的な視点から見ていくこととする。また、次号では実際のプログラムのひとつに焦点をあて、その具体的なプロセスの検証を通して、アートプロジェクトに関わる人と人との価値交換の現在形とその可能性について考えていく予定である。
ボーン・デジタルの情報学
第4回:オープンアクセス
[2010年02月15日号(大向一輝)]
日々出版される何千もの論文誌を逐一購入し、図書館に並べることは物理的にも金銭的にも難しい。電子ジャーナルは、冊子を中心とした従来の情報流通モデルから完全に脱却することで、本連載の第2回で取り上げた「巨人の肩の上に立つ」学術知のシステムを支えるインフラとして必要不可欠なものとなった。一方で、急速なデジタル化による課題が浮かび上がりつつある。今回は課題とその解決のためにどのような活動が行なわれているかについて述べる。