バックナンバー
2016年02月15日号のバックナンバー
フォーカス
本草学の眩暈──人と病と諸事物の歴史
[2016年02月15日号(山内朋樹)]
喘息持ちで体が弱く、さまざまな身体的異変に苛まれ、幼少期から二十歳まで生きることはないと直感していた父は、小学校低学年のころ急性腎炎を患った。いわゆる西洋医学の治療を受ける一方で、少年は明治生まれの祖母にカタツムリの殻をすり潰した奇妙な粉末を飲まされたという。現代医学の処方に慣れたわたしたちからすれば(もちろん父にとっても)、原材料があまりに生々しいこの粉末を飲む勇気はなかなか湧いてこない。けれどもここで重要だったのは、カタツムリによって生きることだ──。こんな話を思い出してしまったのは、大阪梅田のLIXILギャラリーで開催されていた「薬草の博物誌──森野旧薬園と江戸の植物図譜」展(2016年2月16日まで。東京ではLIXIL: GINZAにて3月3日-5月21日)を訪れたからだ。
キュレーターズノート
書籍版『赤崎水曜日郵便局』
[2016年02月15日号(川浪千鶴)]
まだ訪ねたことのない遠隔地の、参加したことのないアート・プロジェクトについて書いてみたい。本来なら足を運び、体験したことを紹介するのが私の流儀なのだが、今回は例外。というのも、いつか手紙を出そうと思い続け、専用封筒を持ち歩いていた「赤崎水曜日郵便局」が、なんと2016年3月31日をもって3年間の活動を終え、閉局するというのだ。
「村上隆の五百羅漢図展」「村上隆のスーパーフラット・コレクション展」
[2016年02月15日号(山口洋三)]
森美術館で「村上隆の五百羅漢図展」を見た。カタールからの《五百羅漢図》だけが出品されているのかと思いきや、新作含む大型の絵画、彫刻も40点近く出品され、まさに大規模な個展だ。さらに今年に入り、横浜美術館で「村上隆のスーパーフラット・コレクション展」も開幕。前者の最終日である3月6日までに関東方面に旅行する予定がある人は、この二つの圧倒的な展覧会をぜひ観覧してほしい。
トピックス
「巫女」のブックデザインに「ウットリ」するひととき
[2016年02月15日号(暮沢剛巳)]
1986年のオープン以来、グラフィックデザインの展覧会を数多く開催してきたgggギャラリーが館内改装のためしばらく休館するという。残念な話だが、展覧会企画自体は場所を変えて継続するそうなので案ずることはない。その第二回目にあたるのが、1月下旬〜3月下旬のあいだ、前後期に分けて日比谷図書文化館で開催されている「祖父江慎+コズフィッシュ展」である。