バックナンバー
2017年03月15日号のバックナンバー
フォーカス
アピチャッポン・ウィーラセタクン──政治と日常の親密さ
[2017年03月15日号(徳山拓一)]
2016年以降、日本でアピチャッポン・ウィーラセタクンの作品を観ることができる機会が増えている。劇場映画では最新作『光りの墓』(2015)の公開に合わせ、過去作品を含む多くの上映会が開催された。また、美術作品では横浜美術館での「BODY/PLAY/POLITICS」展から始まり、さいたまトリエンナーレ、東京都写真美術館の「亡霊たち」などが開催された。今年に入って、「TPAM - 国際舞台芸術ミーティング in 横浜」で初のパフォーマンス作品「フィーバー・ルーム」が上演された際は、大変な注目を集めた。
キュレーターズノート
藤森照信展──自然を生かした建築と路上観察
[2017年03月15日号(角奈緒子)]
建築史家? 路上観察家? それとも建築家? 藤森照信(1946- )は、そのすべてにあてはまる。長野県茅野市に生まれ育った藤森は、東北大学、東京大学大学院で学ぶ。大学院での研究対象は、近代日本建築史。「建築探偵団」を結成して近代洋風建築を調査、その成果として多数の著書が発表されている。赤瀬川原平、南伸坊、松田哲夫、林丈二らと発会させた「路上観察学会」の活動をご存知の方も多いのではないだろうか。路上から目にすることのできるあらゆるものをユーモラスな視点で観察し、本来の意図とは異なる無用の美を採集する。近代建築史・都市史研究の第一人者として多くの業績を残してきた藤森だが、1991年、44歳のときに《神長官守矢史料館》(長野県茅野市)を設計し、突如、建築家としてデビューを果たす。そしてそれ以降、数々の独創的な建築作品を世に生み出してきている。その藤森照信の活動を紹介する個展が、水戸芸術館で始まった。この展覧会、今年の秋に広島に巡回することもあり、現場での制作が多い展示作業に筆者も立ち会ってきた。たまには完成した展覧会のレビューではなく、「裏側」から紹介するのも楽しいのではないか。今回はそのときの様子をレポートしてみることとしたい。
シリーズ ミュージアムとの創造的対話01 Monument/Document 誰が記憶を所有するのか/イノビエンナーレ
[2017年03月15日号(川浪千鶴)]
鳥取県立博物館が、館内外を使った初のプロジェクト型美術展を開催すると聞き、アーティストと企画者がそろう初日のオープニングトークに参加した。前週の大雪は溶けていたが、高知─鳥取間の移動はJRで5時間を超える。山越え、海越え駆けつけたのには、いくつかの理由があった。