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2018年08月01日号のバックナンバー
フォーカス
【香港】産業遺産はAssembleによってどう生まれ変わるか──Centre for Heritage Arts and Textile(CHAT)の挑戦
[2018年08月01日号(マシュー・レオン/高橋瑞木/金田泰裕)]
20世紀なかばに世界で隆盛を誇った香港の繊維産業の遺構が、いまアートセンターに生まれ変わろうとしている。Centre for Heritage Arts and Textile(CHAT)は、かつて香港で最も大きな紡績会社であった南豐紡織有限公司(現在はディベロッパーの南豊集団所有)の元工場をリノベーションして来春オープンの予定だ。センターの共同ディレクターを勤めるのは、水戸芸術館現代美術センターなどで数々の企画展を手がけたキュレーター高橋瑞木氏。2年前に香港に拠点を移し、オープンに向けて準備を整えている。常設展示室の展示デザインは2015年のターナー賞 を受賞したAssemble 。建築だけでなくさまざまな職能を持ったクリエイティブ集団で、地域のボランティアたちと協働するDIY的なリノベーションや都市の再生プロジェクトで注目されている。グランド・オープンにさきがけて、7月に開催されるワークショップの準備に集ったAssembleのマシュー・レオン氏と高橋氏を、香港を拠点にする構造家の金田泰裕氏にインタビューしていただいた。(構成+和訳:yasuhirokaneda STRUCTURE [金田泰裕、菊池美咲])
ゴードン・マッタ=クラークに見る都市の現在と未来
[2018年08月01日号(笠置秀紀)]
ゴードン・マッタ=クラーク展を見ながら考えたのは、かつて東京でも起きていたであろう20世紀の都市の変化に、ニューヨークで対峙していた彼の実践と感覚を、どうやったら現代のこの場所に取り戻せるかであった。アートから見えてくる現在の都市と公共を一巡しつつ、マッタ=クラークの普遍性を考えてみたい。
キュレーターズノート
その触覚は誰のものか
[2018年08月01日号(田中みゆき)]
人間の体や知覚を再定義しようとする動きがあらゆる表現領域で見られるようになった。知覚のなかでも共有が難しいと思われてきた触覚すら、テクノロジーの進化に伴い記録・再現可能なものになりつつある。しかし、技術的には可能だとしても、その伝え方や体験方法については、まだまだ検討すべき点が多くあるように思う。視聴覚のようにメディアを通した共有が容易なものとは性質が異なる触覚に対して、わたしたちはどう共感を覚えることができるのだろうか。
めがねと旅する美術展
水と土をめぐる自然と人の営み──水と土の芸術祭2018
[2018年08月01日号(正路佐知子)]
この夏、初めて「水と土の芸術祭」を訪れた。新潟市で2009年、2012年、2015年と過去3度開催され、今回が4回目となる。「水と土」という芸術祭の名称は、日本海に面した港町、信濃川と阿賀野川に育てられた田園地帯を有する新潟市の地理的特徴による。初回に設定された基本理念「私たちはどこから来て、どこへ行くのか~新潟の水と土から、過去と現在(いま)を見つめ、未来を考える~」とともにこれまで、水と土とどう向かい合えるかをアーティストや市民と考え、実践してきた。この基本理念をもとに、谷新を総合ディレクターに迎えた今回は「メガ・ブリッジ─つなぐ新潟、日本に世界に─」という新たなコンセプトが設けられている。緑や食といった恵みをもたらし、同時に今夏思い知らされたように大きな脅威であり、長い歴史の中で人々が共存しようと苦闘してきた自然。あるいは、土地と土地を隔て、つなぐ海。会場ごとに「四元素」「環日本海」「ボーダー」「交流」といったテーマが与えられ、水と土をめぐる自然と人の営みに焦点を当てている。
福岡からの距離、公共交通機関では周ることが困難な広域にわたる規模から、これまでなかなか足を運ぶことができなかったが、今回重い腰を上げたのは、公共交通機関を用いて周れるコンパクトな展示になっているという前情報に加え、出品作家のなかに大西康明と山内光枝がいたことが大きい。二人は、2014年に福岡市美術館で開催したグループ展「想像しなおし」の出品作家であり、わたしは展覧会後もその活動を追い続けてきたが、異なるテーマのもとで作家が再び集う機会はそうあるものではない。本稿では大西と山内の出品作を中心に、「水と土の芸術祭2018」の一部を紹介したい。