Dialogue Tour 2010
コミュニティとのつながり
鷲田──自分が展覧会をつくったら、やっぱり見てもらいたいという気持ちはあると思うんです。具体的な話ですけど、どのように告知されているのですか。
後々田──告知は、来てくださったお客さんにDMを出したり、あとはメールニュース、それからブログとかウェブとか、そういうものですね。メールがない人もたくさんいますよね。お年寄りの方とか。だからそういう人はDMにします。最近はTwitterみたいなものでガンガンやってくれたりすることもあるし。まあ、でも人は来ないですよ。
服部──僕は告知をほとんどしていないです。今回もトークやりますという告知をしたのは、Nadegataがやった「24 OUR TELEVISION」というプロジェクトのメーリングリストとSNSに2日前くらいに流したのと、あとはTwitter。それから昨日、僕がメールアドレスを持っている人何十人かにただメールをしただけ。なので、知らない人は来るわけがないし、皆ある程度の前提はわかってくれているのかなという感じです。
ただ、今回、Nadegataのプロジェクトに参加してくれた人っていうのはかなり幅が広くて、学生さんからマスコミの方とか、あるいは舞台をやっている人だったり、放送に興味がある人だったりします。Nadegataもとくに「アートプロジェクトに参加しよう」みたいなことは言わないじゃないですか。だから結果的に来てくれるのは、いわゆる現代美術に関心がある人ばかりではないです。
後々田──新聞社とかテレビとか、メディアには出していないですね。下道くんのときは『毎日新聞』に載ったから、けっこう来ましたけど。新聞の力というのは、いまだにやっぱり馬鹿にできない。40日くらいやったんですけど、300人くらい来たんです。こんなできたばかりのところで、300人なんてあり得ないことだから、これはやっぱり新聞と彼の知名度の効果はあったと思います。
服部──リピーターとして次の機会にもまた来てくれますか。
後々田──いや、それは少ないね。やっぱり音楽とかとは違って、美術という視覚表現は、幅がすごく広いので、たとえば下道くんの作品が好きな人が、次に展示する絵が好きかというと、やっぱりそういうふうにはならないんだよね。それは美術館とかでも一緒で、展覧会によって人の入りはすごく違う。リピーターもいるけれど、そんなに安定してということはない。箱つきのお客さんじゃないから、やっぱりそういうふうにはならない。
服部──大阪と地方都市との差ってけっこうあると思うんですよ。たとえば、僕は青森の前は山口にいたんですけど、山口も青森も一緒なのは、基本的にリピーターしかいないってことなんです。というのは、ライブに行く人も美術館に行く人もこういう小さなところの展覧会に来る人も、ほとんど変わらないんですよ。層が決まっているから、そもそもそういうことに興味を持つ人の数自体がすごく限られている。だから、全然違うことをやっても、興味を持って来てくれる方が少数だけどいてくれるというのはすごくおもしろいなと思います。
後々田──いま服部くんがいったことは、正しいところはあるかもね。大阪というのは、痩せても枯れてもやっぱり、大阪市で300万人弱、大阪府で800万人以上いる。神戸、京都、奈良とか入れたら東京よりも人口が多くなるわけだから、かなりの巨大都市ですよね。階層もかなり幅広いから、そこで同じような客がつくというのは難しいです。今回も、いまやっている若いサウンド系の作家たちのものだと、まったく来る人が違う。お得意さんみたいな人は、いまのところは少ないです。それは近所の人だけ。
服部──告知について言うと、僕は展覧会みたいなことをやるときには、絶対チラシとかDMとかをつくるんですよ。でもそれは告知というよりも、紙媒体が好きだから絶対つくりたいという単純な思いですけど、そこがすごく重要なんです。あと、紙媒体があるかないかだけで、自分と作家のテンションが変わります。チラシやペーパーをつくろうよと、いつも絶対言うんですね。だから印刷費だけは毎回必ず用意します。デザインを誰かにお願いするときは、残念ながらお金は払えないことがほとんどですね、お金はないんで。でも違うなにかで返します(笑)。ちなみに今回もチラシをつくりました、開催前日にですが。それでも紙に落としてみると、いろいろ考えられるというか。「なにしたんだっけな」と忘れてしまうことを検証していく材料にもなるし、展示のときにもなにか1枚ペーパーみたいなもので、その作品とか作家について細かく残すのは絶対やろうと思っています。告知という意味ではあまり機能していないですが、人が来て展示をやる楽しみ方のひとつとして、僕は紙媒体に落とすことをすごく意識しています。
後々田──梅香堂も今回初めてチラシをつくって、それはその作家が音楽畑だから、音楽イヴェントのフライヤーのノリでクラブとかライヴハウスにばらまいたりしました。それでどれくらい効果があるのかわからないけど、いわゆる大阪のそういうスペースとのコミュニケーションは取りたいと思っています。だからお客さんというよりも、大阪のそういうオルタナティヴ系、あるいはクラブとかライヴハウスとか、そういったところとの交流はやりたいと思っているんです。大阪ってやっぱり、東京とは文化圏が違うから、そこのおもしろさっていうのはすごくて、深いんですよ。なんていうのかな、すくわれない淀みというか、アンダーグラウンドの深みというのは、東京を凌駕するくらいあるんです。そこの部分にもっと錘を下ろしているスペースというのはもうすでに先輩たちのものでいっぱいあるわけですよね。そういうところと交流することで、なにかそういうものを自分のなかにも引き寄せたいというようなことはあります。
鷲田──関心のありそうな人には届けたいというような意思ですか。
後々田──やっぱり絵を売っていこうと考えたときには、たくさん人が来るということとは別の次元の戦略が必要ということになるんですよね。人がいくら来たって、駄目な場合は駄目なんで。そういうことを考えていくと、パブのターゲットもいったいどう考えたらいいのかなというのがやっぱりあって。いまはまだ1年経っていないですけど、この1年間は、パブリシティに徹して、特に地元の大阪で梅香堂というものの認知度をある程度高めることによって、それこそレンタルとか持ち込みとか、いろんなことで、なにかお金につないでいくことができるかもしれないっていう目論みもあります。だから活動自体が宣伝。いまは無理して投資して宣伝しています。最終的に回収するために今年1年はわりとコアなアーティストをやって、そのことによって来年以降につながるといいかなと。