Dialogue Tour 2010

第2回:かじことhanareの公開交流会@かじこ|Kajico[プレゼンテーション]

須川咲子/三宅航太郎/小森真樹2010年09月15日号

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なるべく支離滅裂に

須川──だんだん軌道に乗ってくると、イベントをやりたいという人が出てきて、レクチャーみたいなものをやることも増えてきました。Tシャツづくりのワークショップをやったり、仕事で一緒だった人についでに来てもらって、レクチャーをしてもらったりしました。あとは、私がプロパガンダをつくることを個人的にやっているので、憲法9条についてのステッカーをつくって、それとヤンキーのイメージを合わせて、世界中の知り合いにバラまいて、世界中で貼ってもらって、日本人を逆輸入で勇気づけようというプロジェクトなんかもやりました。放ったらかしですけどhanareメンバーの吉村さんが中心に畑もやりだしていて、ハーブとか葉野菜をつくって、ちょっとずつ使えるようになったらいいねという感じです。あと、私がイスラエルとパレスチナでプロジェクトをやっているので、一昨年のガザ紛争の後に、イスラエルのテルアビブとパレスチナのラマッラのそれぞれの友人をつないで、それぞれの現状がどうなっているのかをスカイプで聞いたり、「Graffiti Research Lab Kyoto」をつくって、Graffiti Research Lab★1というアーティストの人たちとと大掛かりなプロジェクトをやったりという感じです[図3]


3──Graffiti Research Labとのプロジェクト

見てもらったとおり、「あんたらなにやってんの?」みたいな、かなり雑多なことをやっています。内容的にも、自分達の生活にしか関係のないようなすごく小さいことから、国際政治や都市に介入していくようなアートプロジェクトまで、とにかく内容をできる限り支離滅裂にするようにしています。支離滅裂なのは、すごく小さい生活の部分も、日本の中に居たら関わりを感じづらいようなすごく大きな問題にも、両方が自分たちにとって大事だから、わけずに関わっていきたいと思っているからです。小さなことと大きなこととの間を移動する、その移動の仕方とか組み合わせ方が、自分たちらしいクリエイティビティとか方法論みたいなものとなって、いろいろな人と共有していけるのではないかと。ちょっとウェブサイトを見てほしいんですけど、これを見てすぐなにをやってるかわかりました?

三宅航太郎──わからなかったです。場所がわからない、アクセスがないですよね。

須川──支離滅裂ですごく小さいところから大きいところまでを自由に移動したいということを、このウェブサイトでも見てもらえたらと思っていますが、「なにをやっているかわからない」と言われることは多いです(笑)。あと、活動内容をきちんと伝えるために大事なイベントや情報はバイリンガルにしています。海外で同じような活動をしている人たちに、自分たちの活動をちゃんと伝えるとことはすごく意識してます。でも、サイトだけを見てみんな喫茶はなれに来たらビックリするんです。あまりに小さいから。このウェブサイトとのギャップで。ウェブサイトはわりとカチッとつくっていて、でも日々の活動は小さな空間の喫茶はなれでの月曜日という、その落差をつくっていきたいというねらいはあって、意図的にウェブサイトで演出したいというのはありますね。

★1──Evan Roth(エヴァン・ロス/写真左)とJames Powderly(ジェームズ・パウダリー/写真右)によって2006年に結成される。彼らのねらいはグラフィティライターやアーティスト、デモ参加者やいたずら好きたちに新たなコミュニケーションのためのオープンソース・ テクノロジーを提供することで、人々が広告や権力に取り囲まれた環境をクリエイティブに変える力を獲得することにある。

月曜日は月曜日のために存在している

須川──私たちは「お金ない、土地ない、専門性ない」という人たちが集まってどれだけおもしろくできるかに賭けたいねといつも言ってます。場所が確保されていたりあらかじめ資金があれば、きっとこの喫茶はなれの成り立ちとか活動方針は違うものになっていたと思うんですけど、いまのやりかたは与えられた条件から導かれた必然的な答えかなと思います。とくに、自分の家を開けるとか、かじこの人たちもそうやけど、何人かでやっていることも重要な要素です。自分の家なら家賃で困ることもないし、食事を出してそれで材料費は回収できるし、何人かでやっていたら、たとえば私が居なくても休まなくてすむし。それから、平日にやるのがhanareの活動では大事なことです。はじめた当時は、皆それぞれが仕事を持っていたので、日曜日にやると休みが潰れていくから継続が難しくなっていくんですよね。それで月曜日なんです。月曜日にやると仕事の延長で終わっていくんです。自分らの余暇を潰さずにすむ。あとは、月曜から金曜まで頑張って働いて土日に消費するみたいな生活形態が気持ち悪いから、月曜日は土日に服を買うための月曜日じゃない、月曜日は月曜日のために存在しているという態度で生活したいんです。ただ、月曜日だけしか喫茶をやっていないので、来る人にとったら来にくいんですよね。「土曜とか日曜やったら行けるのに」という人は多いです。私たちも家を開いて、食事を準備してとやっているので、来る人たちも少しだけ覚悟して来てほしいなとは思っています。ただのレストランではないから、そうしたのお互いの協働・コラボレーションだということや、リクリエーションではなく私たちの毎日の生活であるということを伝えるためには、月曜日というのは大きいですね。ただ、喫茶はなれの場合は、来るだけでわりとコラボレーションになっている部分もあります。みんな月曜日で仕事があるなかで、左京区のちょっと離れたところにわざわざ来る、しかもレストランではない場所にご飯を食べにくるっていうことはお互いになにかを与え合うということなのかなと思います。最近本を読んでいて思うのは、きっと1990年代ごろから出てきたようなgenerosityという考え方や、交換が主体となったコミュニティ・アートのプロジェクト★2なんかから繋がる流れなんだろうなと思います。

★2──What We Want Is Free: Generosity And Exchange In Recent Art, ed. Ted Purves という本にまとめられている。


須川氏

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  • Dialogue Tour 2010とは

須川咲子

1978年生まれ。hanareディレクター/ウェイトレス。ニューヨーク市立大学卒業。大学在学中から、フリーで写真展や、「Open Unive...

三宅航太郎

1982年生まれ。おもな活動に、「食事」の「おみくじ」=「おしょくじ」をつくっていくプロジェクト、顔面に建築を組み立てていく《顔面建築》、ヒ...

小森真樹

1982年生まれ。東京大学大学院博士課程。芸術社会学/ミュージアム・スタディース。論文=「日本における『アート』の登場と変遷」(2007)、...