Dialogue Tour 2010

第2回:かじことhanareの公開交流会@かじこ|Kajico[プレゼンテーション]

須川咲子/三宅航太郎/小森真樹2010年09月15日号

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プレゼンテーションディスカッションレビュー開催概要

Social Kitchenへ

須川──去年、GRLをまねいてわりと大掛かりなイベントをやった頃から、「どうするよ、今後」ということを考えるようになりました。4年半、毎週一回自分らの生活を乱さない範囲でとにかく喫茶を開け続ける、なにかおもしろい人たちがいたらレクチャーやワークショップをやる、背伸びしてGRLみたいな人たちともプロジェクトをやってきて、実際迷っていたんです。結局、新しい場所が見つかって拠点を得るんですけど、そうしたら私たちがこれまで日常のなかでやってきたものがどうなるんだろうと、日常が日常じゃなくなるんじゃないのということを話していたんです。
 結果的にはいい場所を偶然見つけることができました。しかもビックリするくらい安い。ここではいままでと違うセカンド・フェーズにいきます。これからはいままでのやり方だけを踏襲するのは無理です。社会を変えるという理念や目的はもちろん変わらないけど、違うやり方を目指すことになります。いままではプライベートのなかにパブリックを持ってきていたけど、これからは逆になります。パブリックのなかにどれだけプライベートの要素を持ち込めるかということに挑戦していかなければ駄目なんだろうなと思っています。
 この場所をSocial Kitchenという名前にして、現代の公民館みたいな場所として運営していきたいなと思っています[図4]artscapeのブログでも「公民館」とよく書いていて、「なんで公民館やねん」とよく言われるんですど、それは、今日、かじこの皆さんと話したいと思っている、ヒエラルキーのなさとか、それぞれの集まる人の立場の問題とか、オーガナイズをどうやってやっていくかというところに関わってくると思うんです。大学でのワークショップとかレクチャーを企画する仕事をしていたり、hanareをやっていくなかで、ある人たちがこういうことに関心を示すきっかけとか、社会に対してなにかを開くきっかけとかの「“きっかけ”ってなんなん? なんかウサンくさいなあ」みたいな感じになってたんです。そういう中途半端に自主的に参加するためのきっかけを提供するイベントが、逆に主催者と参加者のヒエラルキーを補強してるのではと思っていたのです。たとえば、私が仕事をしていたとき、企画者はずっと私です。私に主導権があって、あなたたちは参加者みたいな状況がずっと続いている。そこからもう一歩上にいくようなワークショップをしても、人が来ないんです。きっかけのワークショップにはすごくたくさんの人が来てくれるんです。でも、どういう内容で、どういう世界との接続の仕方で、どういう理論を背景にしてやっていきましょうかということになると誰も人が来ないというジレンマをずっと抱えていたんです。だから、導入を繰り返して中途半端な参加者の人を産み出し続ける状況はよくないと、仕事をするなかで慢性的に反省していました。


4──Social Kitchen外観

公民館的な雑多性をモデルに

須川──喫茶はなれは、私たちが主体者でなんら問題ないと思うんですよね。自分の家を開けて人を招いて、自分たちがホストで別に問題は感じていなかったんですけど、でも新しい場所では、誰かが一方的に企画を打ち続けるようなことを止めたいねと言っています。その点、公民館の企画は基本的に全部持ち込みです。「私の誕生日会やるから貸して」とか、「発表会やるから貸して」とか誰かひとりが企画をする場所ではないんですよね。あと、公民館てすごく雑多なんです。そもそも社会教育法★3でそのように定められている。公民館は、展覧会もやって討論会もやって講座も開いて図書館機能もあってと、すごくいろいろな活動が推奨されている場なんですよね。ただ、やっぱり時代と共に、もともとそうやってできたものがだいぶ形骸化していったり、おもしろくなくなっていたりします。いま公民館というと「え、なにがおもしろいの?」となると思うんです。でも、もとの理念とか想定されている人の集まり方でいえば、私たちがこの新しい場所でやっていきたいことにすごく近いなという印象があって、「これやっ!」という感じです。公民館的な雑多性や人の集まりみたいなものをモデルにした場所を運営していけないかなと模索しています。
  Social Kitchenは、8月に3階のシェアオフィスはオープンして、8月22日にオープニングイベントをします。9月15日から1階喫茶も、オープンします。1階が喫茶と、ジンとかを売るNot Pillar Booksという本屋さん、2階がなんでもやる公民館的スペース、3階がシェアオフィス。hanareにもデザインチームがいるので、hanareデザインと、プログラマーがふたり、デザイナーひとり、あとアート関係のイベントをやっていきたいというグループが借りています。hanareが大家さんで、その人たちに貸しています。3階を4組で使って、それでビル一棟の家賃を回収できたらと。
  hanareの働き方にしても、私らのなかでいろんな労働をシェアできるのかという試みをします。いままで1960年代、70年代とかにいろんな人が実験してきたことです。喫茶と2階のスペースのレンタル代と、hanareデザイン部門への外注仕事とか、私が外でやる仕事とか、ケータリングの仕事とか、そのへんを全部一緒にして等分する。そういう働き方ができるのか、一度やってみたくて。だから、ひとりがいくつかの仕事を担当する。私は普段は喫茶のウェイトレスと管理人。いいアイデアがあるときはたまに企画をする。デザイナーの人も、デザインが6割やけど、4割は喫茶でウェイトレスをする。食の人はわりと専門に就いているけど、なるべく管理の部分にも入ってきてもらうことで、複数の労働をシェアできたらいいなと思っています。それから3階のシェアオフィスの人にも忙しいときには「手伝いが必要です、下りて来て!」って内線をかけようと企んでいます。いまは4-5人ですが、まわりの人たちも手伝いに来てくれます。[図5,6]

★3──社会教育法。URL=http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E6%B0%91%E9%A4%A8


5──Social Kitchen入口


6──レクチャーの様子(OUR主催)

プレゼンテーションディスカッションレビュー開催概要

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  • Dialogue Tour 2010とは

須川咲子

1978年生まれ。hanareディレクター/ウェイトレス。ニューヨーク市立大学卒業。大学在学中から、フリーで写真展や、「Open Unive...

三宅航太郎

1982年生まれ。おもな活動に、「食事」の「おみくじ」=「おしょくじ」をつくっていくプロジェクト、顔面に建築を組み立てていく《顔面建築》、ヒ...

小森真樹

1982年生まれ。東京大学大学院博士課程。芸術社会学/ミュージアム・スタディース。論文=「日本における『アート』の登場と変遷」(2007)、...