日本美術の70 年代とは一体何だったのか?
1960 年代にアメリカでミニマルアートが本格的に始まり、抽象を極限まで突き詰める動向は日本の美術界にも影響を及ぼしました。もの派が台頭したとする日本美術の70 年代は未加工の物質が主役として登場し、「つくらない芸術」の時代を迎えます。そして、その後の80 年代にはポストもの派、ニューペインティングへと移行していきます。しかし、そのはざまで版画や写真表現が、次につながる萌芽を生じさせたのではないか。それを今回、版画・写真メディアに焦点を合わせて見つめ直します。
本企画は、坂上しのぶ氏による『70 年代再考』(2024 年6 月発行)が契機となり立ち上がりました。60 年代後半から黄金期を迎えた版画表現が本当は「消えゆく媒介者」ではなかったのか…。それを時代の動向に沿って丁寧に読み解き、検証された論書です。展覧会では、 その『70 年代再考』で取り上げられた作品を含め、写真と写真製版による版画表現を中心に展示し、次代へ果たした役割とその波紋を検証します。また、「70 年代という時代」・「現代美術における写真」というテーマで2夜連続のトークも開催いたします。
 出版・展覧会そしてトークの三本柱で、70 年代の日本美術において見えなくなってしまった史実を再び掘り起こそうとする試みです