本展は、2023年に富士吉田市で開催された「FUJI TEXTILE WEEK 2023」のデザイン展「甲斐絹をよむ」の続編として開催されます。幻の織物「甲斐絹」に焦点を当て、その背後にある美や文化、そしてそれらを培ったこの土地の人々の営みを探求していきます。特に今回は、甲斐絹の素材である「絹」、そして「蚕」に注目します。
 絹糸を生み出す蚕は、一般的に「天」の「虫」と書かれますが、養蚕が盛んだった江戸時代のお札には「神」と「虫」を合わせて「神虫」と表記されることもありました。なぜこの小さな虫が神と結びついたのでしょうか? そこには6000年にわたる「虫と人との約束」とも言える関係や願いが隠されていました。
 今回は、養蚕農家の芦澤洋平氏や、ふじさんミュージアム学芸員であり考古学研究者でもある篠原武氏を「読み手」として迎え、多角的な視点から蚕と人、絹と甲斐絹の歴史や関わりを紐解いていきます。絹に込められた命の物語を読み解くことで、甲斐絹が過去の遺産としてだけでなく、未来へと続く生きた織物であることを感じていただけることでしょう。
 過去、現在、未来をつなぐ「絹」という生命の素材を通じて、織物を「読む」という新たな体験をお楽しみください。