本展覧会は、令和5年度に株式会社藏珍窯(ぞうほうがま)が多治見市無形文化財 上絵付(うわえつけ)に指定されたことを記念し、藏珍窯の手描きによる絵付け技術から生まれる器とその仕事を紹介する展覧会です。
現会長の小泉藏珍は、1970年に多治見市内で株式会社藏珍窯を操業しました。神主の家系で育つ中で身を立てる実業も必要と考え、代々続く幸兵衛窯で修業し、絵付けの技術を学びました。「食卓で小さな幸せを提供したい」と量産品と高価な作品の中間を狙った器づくりを目指して、手描きによる上絵付陶磁器を50年以上にわたり製造しています。上絵付の中でも赤を主体に、黄色や緑色など2~3色を加えた「赤絵」という絵付け技術を得意とし、原材料となる弁柄(べんがら)を約1000日間摺り続けることで生まれる、濃淡の美しい伸びやかな絵付け製品が代表的です。近年、転写技術が発展し絵付け技術者が減る中、職人への技術の継承を続けながら、新たな赤絵技術を生み出したことなどが評価されました。その他、土から絵付けまで焼物技術全般の向上を図るため、野々村仁清や尾形乾山といった日本文化を代表する古陶器や屏風画を写した陶磁作品の制作を行っています。
本展では、令和5年度に多治見市に寄贈を受けた、尾形光琳の紅白梅図屏風を俎皿(まな
いたざら)に写した大作の紅白梅図寫俎皿を含む全9点をはじめ、藏珍窯が50年以上続けてきた絵付けの器をご覧頂ける展覧会です。手仕事による職人の技を是非ご覧ください。