見知らぬ他者に、おそるおそるさしだす手。
いっしょに踊りませんか?
「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」展は金沢21世紀美術館の開館20周年記念として開催されます。当館の年間テーマである「新しいエコロジー」は社会や精神、情報を含む総合的なエコロジー理論であり、本展はこのテーマに基づきアーテイストの鋭敏な感性と観察のもとに制作された作品を展示します。さらに本展では、同じヴィジョンを共有する科学者や哲学者などの研究者とも協働し、専門的な調査結果や理論を視覚化、可感化 することで、感覚を通した学び(Sensory Learning)としてみなさまに伝えます。
アートは美と技によって見えないものを見えるようにする魔術です。一方で、デジタル化によってすべてが記号化された現代では、見えているものを見えにくくする魔術としても機能します。脱記号(脱言語)化された価値観の転換は、脱人間中心主義にもつながります。 動物や植物や身近に転がるあらゆるモノたちを含む複数のヒューマニテイの可能性を探る方 法はなんでしょうか?かつて私たちは言葉が生まれる以前、身体の動きや意味なき音声によって互いに分かり合い、相互扶助、共生をしていました。それは目を合わせ、手をあわせ、リズムを共有し、共振すること。それはつまり「踊る」ことでした。動植物も人間も隔てなく協働し交感する。またセンサーや先端の技術で調査したデータに感情や感性を吹き込む。あるいはデジタルと物質の間を行き来する転移の過程で語られる未知の物語。そして物質の魔術的な変容がみせる驚き。すべてのものが動き出し、つながり、変わりながら踊りはじめます。 ダンスのためにさしだす手は、世界規模の課題に対する一当事者としてのアクションの第一歩 です。そうして、共に踏むステップはコンビビアルな社会の創造、次の世紀に向かうリズムを奏でます。
辺境を含めたアフリカ、南アメリカ、アジア、欧米の 59 組 10 以上の国と地域の芸術家、クリエイターが集い、美術館空間の中でお互いにダンスを踊るように、生きることの美しさを感受するための知恵と生命を分かち合いましょう。禅を研究した鈴木大拙、また相互関係に重 きをおいた西田幾多郎を生んだこの金沢の地で、自然や見えない存在との交感を通して、みずからもエコロジーの一端にいることを確信してもらえたら。すべてのものを包摂するヴィジョンが共生のプラットフォームとなります。
はい、わたしでよろしければ。