富山大学芸術文化学部の大郷コレクションは、富山県出身の大郷理明氏から寄贈された、近代青銅花器600点を中心とする資料群です。青銅花器の他にも、漆工・木竹工・陶磁器の花器、また花を活ける女性を描いた江戸時代後期の浮世絵などがあります。いずれの作品も、日本の伝統的ないけばな文化、また美意識を伝える貴重なコレクションです。
今回は、日本の近代つまり明治から昭和前期につくられた青銅花器を展示します。そこには様々な生き物があらわされています。蟹、伊勢海老、いなご、アマカエル、ガマ、鯉、牛、千鳥、または龍や獅子といった空想上の生き物までおり、東洋の伝統的な図像です。いずれも金属(鋳金)でつくられていますが、細部までリアルにあらわされており、当時の鋳物師たちの超絶技巧に驚かされます。また合わせて、明治から昭和期に活躍した高岡銅器の鋳物師、初代須賀松園と定塚義正の作品も紹介します。
いずれも日本家屋の床の間で花を活けて置かれていた花器です。昔の日本人は、こうした花器と花により、四季を愛で、また縁起のよい飾りとして親しんできました。ぜひ日本の美と粋をお楽しみください。(富山大学芸術文化学部 准教授 三宮千佳)
また、花を使ったインスタレーションを手がけるアーティスト・佐藤武彦が、青銅花器に花を生けます!