〔展覧会概要〕
呼吸。
それは、生命の律動が内と外をつなぐ行為であり、
存在がその場に根を張るためのリズムである。

酸素を取り込み、内なる世界へ送り込み、それを放出して外界と交わる。
吸うことは可能性を迎え入れることであり、吐くことは不要なものを手放すこと。
こうして生命は絶え間なく循環し、静けさと活力の間を行き来している。

酸素は見えないながらも確かな存在感を持ち、
体と心を結ぶ大切な要素として存在そのものの根源的な営みを象徴している。

近年、大気汚染が進み、ウィルスが蔓延したことで、その透明な世界を曇らせた。
工場からの煙、車の排気ガス、それらが空気に不純物を混ぜ、無色の酸素の清らかさを蝕んでいる。
澄み切った空を仰ぐ機会が減るほどに、私たちは初めてその大切さに気づき始める。
特にコロナ禍を経験したことによって、無意識に行っていた呼吸をするという行為が意識されるようになり、再び酸素の尊さが浮かび上がった。

当たり前に呼吸が出来る幸せ。
必要不可欠である酸素が空気に満ちている幸せ。
それは、私たち人間が永遠に守るべきものであり、日々感謝すべきものである。