私たちにとって身近な憩いの場であり、映画や漫画など調布近郊の文化産業にとって想像力の母胎ともなった多摩川。上流から流れてきた土砂や漂流物が堆積するように、野川や仙川を水系に含む多摩川一帯には、様々な歴史や文化が育まれてきました。
尾花と石倉は、資料調査やフィールドワークの手法で、自然、地理、歴史、民俗をはじめ幅広い分野から対象地域を捉えながら、今ここに暮らす人々や、歴史に残らない小さな集団・個人の記憶をすくい取り、ドローイングや彫刻で表現しています。 本展のための1年に及ぶ調布のリサーチや市民への取材を経て、彼らは調布の「川」と、そこから発生した人の営みや風景の変化に注目しました。
川は時代や土地の境界をこえて流れ続ける一方で、生/死や聖/俗を分かつ境界そのものとしても捉えられてきました。本展では川の視点から、調布の人と自然のかかわりを見つめ、調布の新たな物語を描き出します。

多摩川ジオントグラフィーとは
「多摩川ジオントグラフィー」はリサーチのなかで生まれた造語で、ジオ(geo:その地)+オントロジー(ontology:哲学的存在論)+グラフィー(graphy:書法/画法)を組み合わせています。

<作家プロフィール>
尾花 賢一(おばな けんいち)
1981年群馬県生まれ。秋田県を拠点に活動。人々の営みや、伝承、土地の風景や歴史から生成したドローイングや彫刻を制作。 虚構と現実を往来しながら物語を体感していく作品を探求している。主な展覧会に「国際芸術祭あいち2022」(2022年、常滑市)、「瀬戸内国際芸術祭2022」(2022年、多度津町)、「VOCA2021」上野の森美術館(2021年、東京)など。「VOCA2021」VOCA賞を受賞。
石倉とのユニット名義での展覧会に「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ」文翔館(2020年・2022年、山形市)、「表現の生態系」アーツ前橋(2019年、前橋)など。

石倉 敏明(いしくら としあき)
芸術人類学者。秋田公立美術大学美術学部アーツ&ルーツ専攻准教授。インド各地や日本の東北地方などで聖者や山岳信仰、神話調査を重ね、環太平洋圏における比較神話学の研究を進めるとともに、多様なアーティストと旅やフィールドワークをともにしながら、アーティストの創造と自身の神話研究を交差させている。主な展覧会に第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示「Cosmo-Eggs | 宇宙の卵」 (2019年)など。

<たづくり館内関連企画>
展示室を飛び出して、たづくり館内にも「多摩川ジオントグラフィー」の世界が広がります

●エレベーターホールアート(たづくり1階)
「多摩川ジオントグラフィー」仕様にラッピングします。
期間:1/24(水)~

●「尾花賢一+石倉敏明 多摩川ジオントグラフィー」×調布市立図書館
 「多摩川とアーティストを知る」(たづくり4階・5階 調布市立中央図書館)
たづくり館内の調布市立中央図書館で、尾花と石倉がリサーチで実際に使用した資料や、「多摩川」についてより深く知る資料、そしてアートや人類学について知る資料を展示しています。展示資料は貸出可能です。

期間:3/27(水)~5/26(日) ※時間は図書館の開館時間に準ずる
場所:4階正面展示コーナー