【概要】
 この度、フラットリバーギャラリーでは光藤雄介「檻の外」を開催いたします。
 私たちの日常は数多の境界線のようなものによって区切られていると言えるかもしれません。それら不可視の境界線は、普段意識することは無く気付くこともほとんど無いでしょう。しかしながら極まれに、何かのきっかけでふと境界線が顕在化し、是非にかかわらず認識が変化することがあるように思われます。
 光藤の絵画はシンプルな線の集積で構成されています。ほぼ規則的で正確な線は身近な画材や文具によって描かれ、絶妙なバランスで配置されることによって、画面は時に錯視を誘発し独特な揺らぎのようなものを感じることができます。既存のイメージに絡めとられることを拒絶するかのように感じられるドライな表層と、文学的もしくは詩的で私的なタイトルとの組み合わせは観る者に「絵画とは?」という根源的な問いを明示しているかのようでもあります。この機会に是非ご高覧頂ければ幸いです。

フラットリバーギャラリー

【作家STATEMENT】
ルールこそが自分だと思って線を引いてきた。
その線は枷となって、私を精神の独房に閉じ込めた。
線を引き続けていると、徐々に余白が広がり、ある時、檻の外に出た。
そして結局、何を描いているかというと、自分が今まで入っていた檻を描いている。
見るものは同じでも、見る方向が変わった、という訳だ。
後ろ向きでも良いから進んで行こう。

I believed that the rules defined who I was, so I kept drawing lines.
Those lines became shackles, confining me in a solitary cell of the mind.
As I continued drawing, the margin gradually expanded, and at some point, I got myself out of the cage.
In the end, what I was drawing turned out to be the very cage I had been in all along.
The things I see have not changed—only the direction I am looking from has.
Even if I am facing backward, I will keep moving forward.

June 1, 2025
光藤雄介 / Yusuke Mitsufuji