現在、徳田秋聲記念館では30冊ほどの秋聲宛献呈署名本を収蔵しています。ほとんどが東京に現存する徳田家で保管されていたもので、そのうちの多くは、秋聲を囲む「二日会」および、その発展形となる「秋聲会」(のち「あらくれ会」と改称)にかかわるメンバーから贈られた著作です。
 ことに「秋聲会」「あらくれ会」では昭和7年より機関誌「あらくれ」を発行し、会員を自認する人々以外にもジャンルを問わず多くの作家たちが寄稿しました。秋聲を囲む仲間内の同人雑誌として出発した同誌は徐々に周囲を巻き込み、広く彼らの交わる場のひとつとなっていたのです。
 この展示では当館開館20周年を記念して、徳田家に遺された献呈署名本を一堂に公開すると同時に、雑誌「あらくれ」を絡めながら秋聲の幅広い交友関係の一端をご紹介します。