中国古代の墳墓には、家屋、井戸、豚小屋付きのトイレ、カマドや家具など建物や生活用品をかたどった、建築明器(めいき)と呼ばれる陶製のミニチュア模型が副葬品として埋葬されていました。死者は現世の延長となる世界で生き続けると考えられていたため、来世でも不自由なく幸せに暮らせるようにと、生前の日常にあった、今でいう住宅設備機器や生活様式などがやきもので再現されたのです。大きさも素材も実際とは異なり実用性は失われていますが、理想の暮らしを祈る思いが表出し、素朴ながらも写実的で生き生きとしています。
本展では、中国・漢代(前3-後3世紀)から明代(14-17世紀)におよぶ愛知県陶磁美術館の明器コレクションに一部当館の収蔵品を加えた約50点を展示します。井戸には水を汲むための釣瓶(つるべ)を引き上げる滑車がつき、カマドの台には魚などの食料品や調理器具が型押しされ、トイレには穴が開けられています。建築明器のマストアイテムであるこれらを含め、豊かな来世の暮らしを描いた造形をとおして、古代中国の生活情景に触れながら、秘めたるやきものの魅力に迫ります。[公式サイトより]