浮世絵風景画の第一人者として絶大な人気を誇った初代歌川広重。その没後に「広重」の号を継承したのは、門人の歌川重宣(1826-69)でした。安政6年(1859)に二代広重を襲名した重宣は、師の署名書体や画風を忠実に受け継いだ一方で、幕末明治にかけての激動の世相を反映し、師とは異なる画題や表現にも挑みました。
本展では、二代広重襲名後初の大規模シリーズ「諸国名所百景」を中心に、初代広重による「六十余州名所図会」との比較を通して、師の模倣には留まらない二代広重の独自性に注目します。さらに、「明治の広重」と称された小林清親の作品や「昭和の広重」と称された川瀬巴水の新版画もご紹介し、「広重」と呼ばれた絵師たちの作品における広重イズム――「広重らしさ」「広重っぽさ」の正体を探ります。