寒さと雪に包まれる金沢の長い冬を越えて訪れる春は、町の風景や人々の生活に変化をもたらします。このような気候風土のもとで育まれてきた金沢の美術工芸は、素材や技法に対する繊細な感覚を特徴としてきました。国内産金箔の製造を一手に担ってきた金沢では、絵画、彫刻、漆芸、金工、陶磁器など、さまざまな分野の美術工芸品において、金箔が金粉や金泥など多様なかたちに姿を変えながら用いられてきました。気候条件の影響を受けながら培われてきた感覚と、職人の手仕事によって確立されてきた技法は、やわらかな春の光を受け、金の繊細な輝きとして作品の中に立ち現れます。
 本展示では、金や金箔を用いた美術工芸品の中から、春の訪れを感じさせる作品約三十点を紹介します。それらを通して、厳しい冬を越えて芽吹く春の情景と、その背景にある美意識に触れていただければ幸いです。