葛本康彰個展「一隅の光景」を開催いたします。

●作家コメント
本展は[propagate]と題した霜の結晶の痕跡を塗料によって定着する作品シリーズで構成するものです。この手法の制作は2017年の年始頃、比叡山麓の作業場の屋外で塗装作業をしたまま片付けを忘れ、ひと晩野晒しになったベニヤ板に残っていた痕跡を手掛かりに始まりました。以来、冬が来る度に手探りのトライアンドエラーを繰り返し今日に至ります。蓄積される経験や緩やかな統計によって制作環境の解像度が上がった一方、それでもなお気温や湿度などの数値では捉えきれない微視的な何かの存在に疑いの余地はなく、雄弁な結晶の文様も、私たちの周囲をとりとめもなく満たすもののほんの一端でしかないのです。移ろいゆく自然現象を相手にしていると語りつつも、その実、変化してきたのは私自身の思考や皮膚感覚だったのでしょう。近年は、紙や画布などの地面にそっと寄り添うような支持体が肌に馴染むように感じています。そうした作品の中から、25-26シーズンの新作を展示します。