中川一政(1893-1991、文化勲章受章者)は21歳から油絵を描き始め、生涯をとおして風景や静物、人物など様々な題材に取り組みました。その中でも「薔薇」は、中川の画家人生で最も多く描かれた代表的題材であり、800点を超える作品が生まれています。
 これほど数多く描かれた「薔薇」ですが、どれ一つとして同じものはありません。中川は幾度となく描いた花であっても、描きなれた画題をなぞるのではなく、その都度自ら花を愛用の壺に入れ、日々感動を新たにして描きました。必ず花を目の前にし描くというスタイルを生涯続け、対象によって揺り動かされる自らの心、感動を描くことで、中川だけの生き生きとした「薔薇」が生まれたのです。97歳で亡くなる間際まで精力的に描き続けた「薔薇」の1点1点からは、生涯尽きることのなかった、中川の描くことへの情熱と悦びが感じられます。
 本展では、こうした「薔薇」の中でも、80歳代から90歳代にかけての、円熟期から晩年の作品を中心に展観します。