映画作品の宣伝メディアとして、劇場や街角に貼られてきた映画ポスター―日本の場合、そのほとんどは製作・配給会社のコントロールのもとで匿名的に作られてきました。しかし歴史の糸をたどれば、その枠に収まらず、自立したグラフィック作品としての価値を主張するポスターを見つけることができます。
 とりわけ1960年代以降はさまざまな才能が映画界と交差しました。映画・美術・文学・演劇などのジャンルが絡まり合う中で粟津潔・横尾忠則・和田誠・石岡瑛子といった新世代のデザイナーが登場し、また日本アート・シアター・ギルド(ATG)の発足が業界内外のデザイナーを刺激したことで、映画芸術の革新の動きに並走する形で旧来のポスターのスタイルを変容させます。
 この展覧会は、2012年に当館が主催した「日本の映画ポスター芸術」展を基に、それ以降の新たな収蔵品を加えて開催するもので、主に1960年代から1980年代に制作された90点以上のポスターを通じて映画とグラフィズムとの結節点を探ります。映画の情感を見事にすくい取ったものもあれば、意外性に驚かされる一枚も見つかるでしょう。スクリーンの外側に花開いた映画芸術のもう一つの“顔”をお楽しみください。