中村直勝博士(1890~1976)は『南朝の研究』や『日本古文書学』などの著作で知られる日本古文書学・日本中世史学の権威です。その膨大な研究業績に加え、京都大学、京都女子大学、大手前女子大学(現・大手前大学)において後進の育成にも尽力し、その門下からは多くの優れた歴史学者が輩出されました。
大和文華館が所蔵する「双柏文庫」は、中村博士が生涯にわたって蒐集した古文書コレクションです。その内容は宸翰、公武家文書、消息、願文、起請文、摺仏など広範にわたり、とりわけ消息がこの文庫の核をなしています。
博士は古文書を通して、過去に生きた人々の声に耳を澄まし、その人間的な温かみや面影に触れることに大きな喜びを見出していました。博士の数多くの著作には、古文書を読み解く難しさとともに、そこから得られる楽しさや喜びが随所に記されています。
本展は、没後50年を記念し、中村博士がこよなく愛した「双柏文庫」の古文書を、博士自身の言葉とともに紹介します。博士のまなざしを通して、“古文書の魅力”をあらためて見つめ直します。