1921年に京都・五条坂の絵付師の家に生まれた木村盛和は、国立陶磁器試験所で鉄釉を学び、戦後「天目の名手」として頭角を現しました。作陶の過程で、当時まだ研究が発展途上であった木の葉天目の焼成に関心を持った木村は、1970年代に木の葉天目と油滴天目とを組み合わせた《油滴木の葉天目茶盌》を創作します。木村の陶技はテレビ番組でも放送され、広く知られるようになりました。
鉄釉作家としての地位を確立してなお、研究に飽き足らなかった木村は1976年、夫人の故郷である越前に「小倉見窯」を築きます。これを皮切りに全国各地に自ら足を運び、20年以上をかけ鉄釉の材料となる200種以上の鉱物の原石を採取し、前人未踏の窯変結晶の世界を完成させました。
本展の副題は、夫人である木村昌子が出版した詩集『鶏冠壺』(1988年)収録、短歌「一かけの石に託する夢地上の星 盛和のひとみキラキラ輝く」に由来します。約75年にもわたる作陶生活のなかで常に目標を持ち研究に打ち込んだだけでなく、福井県の文化振興にも携わり慕われた、陶工・木村盛和のひたむきな姿を紹介します。