「アートは、ごはん。毎日の生き方そのものがアート」と捉える、野田涼美さん。
日々の暮らしや社会に潜む矛盾や違和感をすくい上げ、独自の視点で作品へと落とし込んでいます。
一見すると美しく軽やかな作品のなかに、現代社会への問いを忍ばせ、鑑賞者はその問いを日常の中でじわじわと考えることになります。

今回の展覧会では、アートの傍ら手がける、工業用素材を用いた、実際に「着る」ための〈編みシャツ〉が並びます。メタリックな艶、フォルムの面白さがある<編みシャツ>は、エッジの効いた着こなしのアクセントになるでしょう。

実はそこには、ヴィヴィッドな色彩など人工素材ならではの魅力に惹かれながらも、環境課題との間に生まれる作家の葛藤も含まれています。
どちらか一方を正解とするのではなく、矛盾を含んだままバランスを保ちながら成る社会。
<編みシャツ>は、そうした一見相反するもののあいだに生まれる揺らぎの可視化とも言えます。

◎作家プロフィール
1980年代より京都を活動拠点として作品を発表。商品タグ、薬のプラスチックパッケージ、紋紙など廃棄される工業資材や消耗品を、伝統技術で作られた漆糸、金箔、西陣織などと共に用いて作品を制作。
国外では、イギリスはじめスウェーデン、リトアニア、ポーランド、中国、オーストラリア、ブルガリアなど10ヵ国以上の国で招待され作品を展示。
京都市立芸術大学特任教授(2017〜22年)。京都造形大学(現・京都芸術大学)特任教授(2012〜17年)。
川島テキスタイルスクールディレクター(2006〜17年)を経て、アドバイザー(2017〜現在)。
*パブリックコレクション(京都国立近代美術館)
*野田凉美作品集 「HINTS FOR ART」(青幻社)