街中で広く眼にする「ポスター」は主に広告を機能とするものですが、版を使った印刷という点では版画の方法論に基づく表現でもあります。また、「ポスター」は掲示物という意味であり、必ずしも広告であるとは限りません。同じ印刷物である版画とポスターの区別は明確ではありません。実際、多色リトグラフの技術が飛躍的に発展した19世紀後半以降、ポスターは掲示される前に市場で売買されるほどの人気を獲得しました。それらは広告としてではなく、美術品として収集されたのです。現代においては、ポスターと版画の境界を意図的に越境するような試みも多くなされています。
 本展では、美術工芸資料館収蔵の現代ポスターの実験的な表現の数々と、現代美術の領域から版画の可能性を拡張しようとする実践とを合わせて紹介することで、いま一度版画とポスターの境界について思いを巡らせてみたいと思います。本展を通して、版と刷りの多様さと面白さを感じ取ってもらえれば幸いです。