フォーカス
Françoise Pétrovitch展 Musée de la Chasse et de la Nature
栗栖智美
2012年02月01日号
無垢な残虐性
この秋冬の狩猟シーズンの展示アーティストはサヴォア地方シャンベリー生まれのフランソワーズ・ペトロヴィッチ(Françoise Pétrovitch)。彼女は、少女をモチーフにした淡い色彩のイラストレーションが有名である。ときに大人の女性のような色気があり、ときに人形とも思えるほどの生気のない少女がにじんだ色彩で浮かび上がる。虚ろな目でこちらを見据える少女の儚い姿が印象的だ。
狩猟自然博物館での展覧会では、平面、彫刻、インスタレーション、ヴィデオとさまざまなペトロヴィッチの作品が堪能できる。2年の準備期間を経てこの展覧会のためにつくられた作品が多くを占めているため、狩猟自然博物館のテーマである「動物たちへの敬意のうえに成り立つ狩猟」「自然と人間との距離感」を、「子どもの視点で見た動物」という彼女なりの解釈で提示している。
1階受付を過ぎると、マンサールのファサードが残る中庭にウサギやシカなどの動物の頭や花をかたどったセラミックのインスタレーション(写真1)が迎えてくれる。この展覧会では彼女の数々のセラミック作品を観ることができるが、これらはパリ西郊外のセーヴルにあるフランス国立陶磁器製造所の協力のもとつくられたものだ。ロココ時代につくられた王立の陶磁器工場であるが、18世紀、19世紀の室内装飾と彼女の2010年の作品がうまく調和しているのはセーヴル焼という気高い陶磁器の手法のせいなのかもしれない。
企画展示室では《les Vanités(虚しさ)》という彼女の作風を端的に示すタイトルの淡彩画(写真2)が架けられ、奥の部屋では鳥と少女がピストルで打たれるというストーリーのアニメーションが上映されている。