フォーカス

Françoise Pétrovitch展 Musée de la Chasse et de la Nature

栗栖智美

2012年02月01日号

 2階は常設展示室であるが、ここでは動物の剥製や18、19世紀の室内装飾の重厚感と対照的な繊細で儚い作品が展示されている。しかも展示室の雰囲気を損なわないように控えめに作品が「隠されて」いる。例えば鹿とオオカミの間では狩猟犬用の首輪のオブジェの横に対になるようなオブジェがある。コレクションの方は鉄製で棘がついておりいかにも男性的な強さがあるのに対し、彼女の方は透明のガラスと銀メッキでつくられ、鋲が内側についていたり、ウサギの耳がついていたりと少女の遊び心がつまった作品(写真3)となっている。ほかにも、動物や狩猟のシーンが描かれた陶磁器を飾る部屋では、ペトロヴィッチによる野生の動物と人間のデッサンが描かれた12枚の「紙皿」(写真4)が紛れている。やはり非実用的で軽快な作品は、そのままこどものおままごとの世界と一致する。


写真3:Fairy tail (2010) © Hervé Plumet / Courtesy galerie RX


写真4:L'art d'accommoder le gibier (2010) © Hervé Plumet / Courtesy galerie RX


 ほかにも、《Sentinelle(見張り番)》と題され、コモードやコンソールテーブルに乗せられたブルーや紫、白のウサギの頭像(写真5)は壁紙の色と一致させてペトロヴィッチの言葉通り「自然の中でかくれんぼをしている」かのようであり、部屋の隅にちょこんと座っているウサギ(写真6)はおとぎばなしに出てくる妖精のような存在感である。
 一方で、鳥の間では、人間と共存し、かくれんぼをしていた動物たちの悲しい末路も語られる。少年や少女たちに食べられたり絞め殺されてしまった鳥たちの絵画(写真7)だ。ペローやアンデルセンの童話に出て来るように、純粋な少年少女は時に残酷なのである。


写真5(左):Sentinelle bleu de Prusse (2011)[筆者撮影]
写真6(右): Lapin-témoin (2009)[筆者撮影]


写真7:Filles, garçons aux oiseaux (2010-2011) © Hervé Plumet / Courtesy galerie RX


 狩猟と自然という相反する概念を、なんの躊躇もなく同席させてしまうという人間中心主義のフランスならではの博物館であるが、ペトロヴィッチは動物の愛らしい姿に子どもの無垢な残虐性を介在させることによって人間優位の歴史の負の遺産に気づかせてくれる。
 筆者が訪れたのが冬のヴァカンス中であったため、静謐なはずの博物館という空間に子どもたちが楽しそうにかけずり回る姿がとても印象的であった。そして私も気づけば、彼らと同じような無邪気な視線でフランス古典絵画や工芸品、調度品の名品に紛れる現代美術の作品を宝探しのように見つけて歩いているのであった。

フランソワーズ・ペトロヴィッチ展
Françoise Pétrovitch展

会期:2011年9月2日〜2012年1月22日
場所:Musée de la Chasse et de la Nature
   62, rue des Archives, 75003 Paris
URL:http://www.chassenature.org/

  • Françoise Pétrovitch展 Musée de la Chasse et de la Nature