フォーカス

作品をつくる場所を集まってつくる──京都・アーティストスタジオ特集

artscape編集部

2019年12月15日号

若いアーティストにとって、制作スペースをどう確保するかは重要な課題である。数人のアーティストが集まって共同で制作スタジオをもつことは珍しくはない。都心では高い家賃という問題を数人でシェアすることで解決できるし、地方なら広い空き物件でも人数がいれば、DIYで改装することができる。場所だけではなく、制作に必要な道具を共有できることもあるし、友人やキュレーターやギャラリストといったアート業界の人脈も共有できる。スタジオで自主的な展覧会を開催することも可能である。実際そんなアーティストスタジオは全国的に増えてきている。
さて、今号の「フォーカス」では、そんなアーティストスタジオを紹介したいと思う。しかも、京都限定である。
文化庁の移転、京都市京セラ美術館のリニューアルオープン、また京都市立芸術大学の移転など、京都のアートシーンはいま大きな変貌のなかにある。だが、そういった公の動きや全国的にひろがるオリンピック関係の文化事業とは別に、インディペンデントなところで地殻変動が起きているようなのだ。それは、今年artscapeのレビューキュレーターズノートの記事からもその片鱗をうかがうことができた。
その地殻変動の現場=アーティストスタジオを見たい!
今回、数ある京都のアーティストスタジオのなかから7つのスタジオを訪問。メンバーの方々にスタジオの経緯や特徴などを伺った。スタジオの撮影は今回取材したスタジオのひとつに所属する前谷開さんにお願いした。
では、京都の贅沢なスタジオ訪問、お楽しみください。

用途によって柔軟に変化するスタジオ──
artists space TERRAIN



(左から)西原彩香、澤あも愛紅

1. スタジオの開設時期は?

2019年春

2. スタジオの広さと家賃を可能な範囲で教えてください。

広さ:58㎡
家賃:9万3千円

3. 所属メンバーのお名前と専門とするジャンルを教えてください。

木村翔馬(絵画、VR)
澤あも愛紅(絵画、写真、インスタレーション)
西原彩香(絵画、インスタレーション)

4. スタジオメンバーとの共同での活動は何かありますか?

2019年7月13日(土)〜8月10日(土)に児玉画廊|天王洲にてスタジオメンバー3人での展覧会をしました。

5. なぜ、この場所をスタジオにしたのですか? どのようなかたちで始まったのですか?

アーティストのための住宅兼制作スタジオの賃貸プロジェクトをしているBASEMENT KYOTOさんに物件を紹介していただいたのがきっかけです。もともと、このメンバーでシェアスタジオを作ることは決めており、アクセスのよさを気に入りました。

6. スタジオを始めてよかったことは?

学校とは違い、ギャラリーとして使えるスペースを併設しているので、作るだけではなく見に来てもらえる場所になったと思うところです。スタジオビジットや勉強会、打ち合わせの予定を組むのが楽しいです。

7. 一般の人がスタジオを見に行くことはできますか? それはいつですか?

オープンスタジオの期間です。
2020年はGW頃を予定。詳細はSNSにて更新。(Twitter: @TERRAIN_1)

8. 今後、このスタジオでどんなことをしていきたいですか?

制作と並行して、同世代のアーティストを紹介する展覧会や、アーティストの制作・活動のための勉強会の企画ができたらいいなと思います。

9. このスタジオの個性や利点、自慢したいところは何ですか?

昔、牛乳屋さんだった店舗をリノベーションしてスタジオとして利用しています。土間を改装して作った入り口スペースは、制作はもちろん、ギャラリーのように利用することも可能です。室外機上の空きスペースを活用したウィンドウギャラリーと、水銀灯、スタジオロゴの入ったライトボックスがうちのスタジオの看板になっています。また、屋根裏のストレージに上がるためのハシゴもトレードマークです。
作家的にうれしいのは、入り口が広くて大きな作品の搬入出がしやすいところです。中庭や土間などの開けた場所があることで、改装のときも作業がしやすかったです。キッチンもあるので、オープンスタジオの際のケータリングもここで作りました。
そして、スタジオロゴもとても気に入っているポイントのひとつです。ロゴのイメージを伝えたうえで、京都を拠点に活動するバンド“バレーボウイズ”の高山燦さんにデザインしていただきました。京都のシェアスタジオにはロゴマークがあるところが多いので、ここは三人でこだわりました。
また、展覧会のように最初にスタジオのコンセプトがあったところも個性的な特徴だと思います。スタジオ名の由来となった「terrain」という単語には、「地形 / 地域 / 分野 / 領域」という意味があります。加えて、3DCGを扱うゲームエンジンにおいては、「自由に設定できる仮想の土地」を作るための機能の名称でもあります。手元で広大な土地を操れる可変性と軽快さにリアリティを感じ、スタジオの名前にしました。
由来のとおり、今後もアーティストと場所との豊かな関係性を、このスペースを拠点にすることで探れたらと思います。

10. スタジオメンバーの今後の活動

□木村翔馬、西原彩香
ARTISTS’ FAIR KYOTO 2020
会場:京都府京都文化博物館 別館(京都府京都市中京区東片町623ー1)および京都新聞ビル地下1階(京都市中京区烏丸通夷川上ル少将井町239)
会期:2020年2月29日(土)、3月1日(日)

□木村翔馬、澤あも愛紅、西原彩香
オープンスタジオ
会場:artists space TERRAIN
会期:2020年5月(予定)


artists space TERRAIN

所在地:京都府京都市上京区 頭通 上立売上がる室町頭町293番地1
Instagram: https://www.instagram.com/terrain.ask/
Twitter: https://twitter.com/terrain_1
Mail: terrain.ask@gmail.com


同世代の女性作家たちによる、親密で風通しの良い空間──
punto



(左から)嶋春香、山西杏奈、森山佐紀、松平莉奈

1. スタジオの開設時期は?

2014年4月

2. スタジオの広さと家賃を可能な範囲で教えてください。

広さ:約181㎡
家賃:1人あたり約3万円

3. 所属メンバーのお名前と専門とするジャンルを教えてください。

岡本里栄(絵画)
嶋春香(絵画)
天牛美矢子(染織)
長谷川由貴(絵画)
松平莉奈(絵画)
森山佐紀(漆工)
山西杏奈(立体)

4. スタジオメンバーとの共同での活動は何かありますか?

スタジオメンバー全員での活動だと、
・毎年ゴールデンウィーク前後にオープンスタジオ
・フリーペーパー『SHAKE ART!』企画のイベント「BORDER」ゲスト出展(2018年10月13日〜14日)
・ギャラリー16にてpuntoキュレーションの企画展「punto practice/study/exercise」(2019年11月12日〜23日)
などがあります。
その他も、それぞれメンバー同士で展覧会や作品制作など、共同の活動は盛んに行なっています。

5. なぜ、この場所をスタジオにしたのですか? どのようなかたちで始まったのですか?

大学院の卒業を控えシェアスタジオを探していた際HAPSに相談し、紹介していただいたのがこちらでした。

6. スタジオを始めてよかったことは?

制作において、お互いの知識や意見を交換できること。個人での活動より、スタジオヴィジットやリサーチの機会に恵まれること。お互いの立場もよく理解しているので、励ましあい支え合える環境下で制作できること。

7. 一般の人がスタジオを見に行くことはできますか? それはいつですか?

基本的には非公開です。毎年ゴールデンウィーク前後の数日にオープンスタジオを行ない、この期間のみ広くご覧いただけるようにしています。

8. 今後、このスタジオでどんなことをしていきたいですか?

スタジオメンバーそれぞれの持つ技術や知識、興味のあることなどを交換したり、見識を深める勉強会のような機会をつくってみたいと思っています。

9. このスタジオの個性や利点、自慢したいところは何ですか?

個性:制作メディアを挙げても、フレスコ、岩絵具、油絵具、漆、木、テキスタイル、革…などさまざまな材料を元に制作している作家が在籍しています。また結果的に同世代の女性作家が集まっており、親密かつ風通しの良い関係のため、スタジオ単位でもメンバー間でもいろいろな活動ができることはpuntoの個性だと思います。
利点:181㎡の広さがある点、京都駅から徒歩8分とアクセスが良い点、大家さんが創作活動を応援してくださる点です。
4階建てのビル1階半分+2階がpunto、3階は小劇場(別テナント)が入っていて、ちょっとした複合施設のような環境です。ビル全体として人の出入りが多いため、あまり閉鎖的にならず、外部とゆるやかに接点を持てるところもこのスタジオの利点だと思います。
来年2月頃、スタジオメンバー全員での展示を計画中です。また、例年通りオープンスタジオも行なう予定です。今後の詳細は、puntoのFacebookページ、またはpuntoのウェブサイトにてお知らせします。

10. スタジオメンバーの今後の活動

□天牛美矢子、長谷川由貴
THE GIFT BOX 2019 アーティストが提案する特別なギフト。
会場:京都文化博物館 別館ホール(京都市中京区高倉通三条上ル東片町623-1)
会期:2019年12月21日(土)、22日(日) 11:00〜18:00

□長谷川由貴、山西杏奈
Find Your Art for Christmas─大切な人への贈り物
会場:MARUEIDO JAPAN(東京都港区赤坂2-23-1 アークヒルズフロントタワー1F)
会期:2019年11月26日(火)〜12月25日(水)11:00〜18:00(日月祝休)

□松平莉奈
美人画展「令和・京・美人
会場:銀座 蔦屋書店(東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F)
会期:2019年12月27日(金)~2020年1月13日(月)

「美の予感2020 ─平面・特異点のカナリア─」
会場:髙島屋日本橋店6階美術画廊(東京都中央区日本橋2丁目4番1号)
会期:2020年1月29日(水)~2月4日(火)(京都、横浜、名古屋、大阪、新宿に巡回予定)

□森山佐紀、山西杏奈(詩と構成:天牛美矢子)
朝と夜、森にて
会場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(京都市中京区押油小路町238-1)
会期:2020年2月15日(土)〜3月1日(日)11:00〜19:00
月曜休館(祝日・振替休日の場合は開館、翌火曜日に休館)


punto

所在地:京都府京都市南区東九条南山王町6-3
ウェブサイト:http://punto-studio.net/


幅広い年代のアーティストたちによる、滞在可能なシェアスタジオ──
Vostok(ボストーク)



矢津吉隆

1. スタジオの開設時期は?

2018年6月

2. スタジオの広さと家賃を可能な範囲で教えてください。

広さ:74㎡
家賃:秘密

3. 所属メンバーのお名前と専門とするジャンルを教えてください。

西條茜(陶磁器)
笹岡由梨子(映像)
田中秀和(絵画)
水木塁(写真)
矢津吉隆(彫刻)

4. スタジオメンバーとの共同での活動は何かありますか?

毎年、オープンスタジオを企画しています。
また、2020年に予定しているロシア・ウラジオストックでの展覧会の企画などがあります。

5. なぜ、この場所をスタジオにしたのですか? どのようなかたちで始まったのですか?

矢津と水木で最初にシェアスタジオをつくる計画があり、そこに笹岡が加わるかたちでVostokが誕生。その後、現在の場所に移転するのをきっかけに西條と田中が加わりいまのメンバーに。
現物件はメンバーの矢津が関わっている「BASEMENT KYOTO」という、アーティストを対象としたスタジオ賃貸事業の物件として改修。設計プランはレジデンススペースを設けるなどメンバーも一緒に計画し、施工にはスタジオメンバーも参加、約2か月間の改修期間を経て完成させました。

6. スタジオを始めてよかったことは?

メンバーそれぞれがすでにアーティストとして一定のキャリアを積んできているので、美術関係者(学芸員やキュレーター、ギャラリスト、コレクターなど)との人脈を持っており、それをシェアできるのがよかったところです。また、メンバーの活躍がお互いの創作の刺激になっています。

7. 一般の人がスタジオを見に行くことはできますか? それはいつですか?

普段は一般の方の見学は受け入れておりませんが、年に1回のペースで開催しているオープンスタジオの際に見学することが可能です(不定期開催)。

8. 今後、このスタジオでどんなことをしていきたいですか?

レジデンススペースを活用して海外のアーティストの招聘などを行なっていきたいと思っています。そのために滞在制作を受け入れられるスペースも設けました。

9. このスタジオの個性や利点、自慢したいところは何ですか?

Vostokにはジャンルの異なる20代から40代までの幅の広い年代のアーティストが集まっています。そして、それぞれが新進気鋭のアーティストとして積極的な活動を行ない評価を得ていることで、国内外からさまざまな美術関係者がスタジオを訪れます。キュレーターや美術館の学芸員、ギャラリストやアーティスト、コレクター、評論家など、個人では得られないさまざまな機会がこのスタジオにはあります。そのような機会をメンバーでシェアできることは大きな利点です。また、スタジオの空間を自分たちで考え、大規模な改修を行なったことでこの場を自らの手で獲得できたように思います。あえて自分たちの制作スペースを削ってでも、滞在可能なレジデンススペースを設けて、場を有効に活用することでただのシェアスタジオでは収まらない独自の活動を行なっていきたいと考えています。海外からのレジデンスアーティストを受け入れることでスタジオとしての収益を得たり、スタジオ部分の短期のレンタル使用を可能にするなど、シェアスタジオを持続可能な仕組みとして維持していくための経営的視点が私たちにはあります。メンバー5人が集まることで、ひとりでは不可能なそういったことが可能になると感じています。

10. スタジオメンバーの今後の活動

□矢津吉隆(副産物産店として参加)
やんばるアートフェスティバル 2019-2020 山原黄金之杜
会場:大宜味村立旧塩屋小学校(沖縄県)ほか
会期:2019年12月14日(土)〜2020年1月13日(月)


Vostok

所在地:京都府京都市上京区風呂屋町66
ウェブサイト:https://vostok-kyoto.jimdofree.com/


複数のコミュニティが混交する場として──
スタジオUSA



(左から)彦坂敏昭、山田周平

1. スタジオの開設時期は?

2017年元日

2. スタジオの広さと家賃を可能な範囲で教えてください。

広さ:秘密
家賃:秘密

3. 所属メンバーのお名前と専門とするジャンルを教えてください。

山田周平(ビジュアルアート)
彦坂敏昭(絵画)

4. スタジオメンバーとの共同での活動は何かありますか?

いまのところ、オープンスタジオが主です。

5. なぜ、この場所をスタジオにしたのですか? どのようなかたちで始まったのですか?

場所に特別な理由はないのですが、物件探しのなかで、広すぎて事務所物件としては借り手がなかなか見つからないという建物と出会いました。駅からのアクセスも良いのと、最終的には「風水」で決めました。

6. スタジオを始めてよかったことは?

スタジオが広いので気持ちよく作品がつくれること、友達はもちろんのことギャラリストやキュレーターが遊びに来てくれることが、スタジオを持ってよかった点です。

7. 一般の人がスタジオを見に行くことはできますか? それはいつですか?

もちろん、いつでも歓迎ですが、スタジオに来られる目的(作品が見たいのか、作品の話をしたいのか、一緒にお酒を飲みたいだけかなど)を事前に知らせていただけると、準備や心構えがスムーズかもしれません。

8. 今後、このスタジオでどんなことをしていきたいですか?

研究者用のレジデンスや、展覧会、イベントなどを考えています。

9. このスタジオの個性や利点、自慢したいところは何ですか?

山田周平と彦坂敏昭の共同で立ち上げたスタジオUSAは、京都市右京区で2年ほど前に始まったばかりです。山田と彦坂は共に東京を拠点に活動をしていた時期があり、その後、時期こそ異なりますが、京都に拠点を移しました。以降、展覧会を企画するなど、場を持たない活動を続けてきましたが、海外からのゲストや、キュレーター、ギャラリストへのプレゼンテーションなど、スタジオを持つ必要性を感じる機会が多くなり、共同で物件を借りることになりました。
現在、山田は京都(スタジオUSA)だけでなく、ニューヨークやロンドンにも拠点を持っており、さまざま場所やコミュニティをつねに移動しながらアーティスト活動を続けています。また一方、彦坂は〈木曽路〉という3名のアーティスト(鬣恒太郎、前谷開)からなるグループに所属しており、スタジオ以外の場所に出向き、さまざまなアーティストアクティビティに精力的に関わっています。
二人は、スタジオが本来の役割としての「篭って制作をする洞窟的な場」としてだけでなく、それぞれのアーティストが持つ固有のコミュニティが混交する場としても機能することを心がけています。またそれ以外にも、木曜金曜のみ、無償で制作環境を持たないアーティストへのスタジオ開放を行なっています(2年間の期限付きで大学卒業後のアーティスト1名に向けて)。自分とスタイルや思考、関心の異なる他者がつねにスタジオの中や周辺にいることによって、その混交はより豊かなものになっていくと考えています。


スタジオUSA

所在地:京都府京都市右京区太秦安井松本町1-5 2F
ウェブサイト:
http://hicosaka.com/(彦坂敏昭)
https://www.shuheiyamada.com/(山田周平)


メンバーチェンジを重ねながら10年続く、元酒蔵をDIYしたスペース──
GURA



(左から)谷川美音、鮫島ゆい

1. スタジオの開設時期は?

2009年

2. スタジオの広さと家賃を可能な範囲で教えてください。

広さ:約240㎡
家賃:15万円

3. 所属メンバーのお名前と専門とするジャンルを教えてください。

沖見かれん(絵画)
鮫島ゆい(現代美術、絵画)
谷川美音(漆芸)
松本知佳(平面)
三枝愛(現代美術)
茂苅希美(絵画)
吉田桃子(絵画、インスタレーション)

4. スタジオメンバーとの共同での活動は何かありますか?

数年に1回のペースでオープンスタジオと、時々ご飯会を開いています。

5. なぜ、この場所をスタジオにしたのですか? どのようなかたちで始まったのですか?

初期メンバーが元酒蔵を改装し、美術・工芸の作家やデザイナーがメンバーチェンジを繰り返しながら現在まで運営を続けています。

6. スタジオを始めてよかったことは?

他ジャンルの作家と自然に交流を持てること。(谷)
ひとりで黙々と作品を作りつつ、情報共有もできること。(鮫)

7. 一般の人がスタジオを見に行くことはできますか? それはいつですか?

通常は公開していません。アポイントメントがあれば対応可。オープンスタジオは不定期で開催します。

8. 今後、このスタジオでどんなことをしていきたいですか?

ときにはメンバーの興味があることや問題意識を共有することも共同スタジオの運営としては重要なことだと思うので、定期的にオープンスタジオやトークイベントなどを開催していきたいです。

9. このスタジオの個性や利点、自慢したいところは何ですか?

来年で12年目を迎えますが、メンバーの変遷とともに柔軟に変化していっているスタジオだと思います。 元酒蔵の建物であるということがスタジオの個性になっており、「GURA」の由来もそこからきています。

初期メンバーががっつりDIYをした構造がそのまま残っており、ちょっと秘密基地のような雰囲気が特徴的です。 天井が高いので閉塞感がなく、天井から吊るすような大作の制作もできます。夏は暑く冬は寒いですが、スタジオとはそういうものだろうとみんな割り切って利用しています(笑)。

広々とした共同のリビングがGURAの象徴的なスペースで、初期の頃はここでDJイヴェントなどを催していたそうですが、現在はメンバーどうしやゲストの方との交流や憩いの場、時々お昼寝の場所(笑)になっています。 現在のメンバーは自分のブースをしっかり区切って利用しているので、普段は各自のスペースで黙々と制作していることが多いのですが、リビングがあることで集まって話す機会が持てています。 共同スタジオという、作ることを第一とした少し特殊なコミュニティにおいては、個人の制作ペースを崩すことなく心地よい距離感を保つことも重要だと思うので、その切り替えがうまくできるスペースがあるのは有り難いです。

GURAの利点としては、最寄り駅まで徒歩約5分、スーパーも5分、郵便局は3分、画材屋さんが30秒の位置にあり、何かと便利な立地であることです。
大家さんがとても温和で協力的な方だというのも大きな長所です。いつもメンバーの活動を応援してくださっており、スタジオの設備を整えたり展覧会に足を運んでくださるなど、とてもよくしていただいています。 周りの環境に恵まれた良いスタジオだと思います。

これからも、この居心地のよさは守りつつ、たまに面白い試みができればいいなと思っています。(鮫・谷)

10. スタジオメンバーの今後の活動

□三枝愛
「木の日—树节」
会場:ホホホ座浄土寺店 1階奥ギャラリースペース(京都市左京区浄土寺馬場町71 ハイネストビル1階)
会期:2020年1月11日(土)〜2月9日(日)

□谷川美音
個展(タイトル未定)
会場:FINCH ARTS(京都府京都市左京区浄土寺馬場町76)
会期:2020年2月14日(金)〜3月1日(日)

□吉田桃子
ARTISTS’ FAIR KYOTO 2020
会場:京都府京都文化博物館 別館(京都府京都市中京区東片町623ー1)および京都新聞ビル地下1階(京都市中京区烏丸通夷川上ル少将井町239)
会期:2020年2月29日(土)、3月1日(日)


GURA

所在地:京都府京都市伏見区両替町15-141
Instagram: https://www.instagram.com/gura_studio/
Twitter: https://twitter.com/gura_kyoto

ゼロからこの場所をつくる──
山中Suplex



(左から)坂本森海、前谷開、小宮太郎、和田直祐、本田大起、小笠原周、石黒健一

1. スタジオの開設時期は?

2013年の夏頃から片付けと改装を始めて、2014年の春頃に本格的にスタジオとして始動しました。

2. スタジオの広さと家賃を可能な範囲で教えてください。

敷地は山といくつかの建物を含んでいて、広さはよくわかりません。
家賃:13万円

3. 所属メンバーのお名前と専門とするジャンルを教えてください。

石黒健一(彫刻)
小笠原周(彫刻)
小宮太郎(美術)
本田大起(彫刻)
木村舜(人間)
小西由悟(作家、大工、インストーラー)
坂本森海(陶芸)
前谷開(アート)
宮木亜菜(彫刻)
和田直祐(画家)

4. スタジオメンバーとの共同での活動は何かありますか?

スタジオの改築や、BBQなどのイベント、また「山中suplex」として展覧会に参加したりもしています。

5. なぜ、この場所をスタジオにしたのですか? どのようなかたちで始まったのですか?

制作するうえでの騒音、粉塵などの問題がない場所だったこと。京都、滋賀の中間地点だったことも挙げられます。でも、何よりこの場所を見たときに、僕たちがワクワクしてゼロからこの場所を作ることができそうだと感じたからだと思います。

6. スタジオを始めてよかったことは?

自分が知らない技術をほかのアーティストが教えてくれたり、技術やアートに対しての多様な意見をぶつけ合ったり、共有できるようになったこと。話し合える仲間がいること。

7. 一般の人がスタジオを見に行くことはできますか? それはいつですか?

夏のBBQパーティーや展覧会などのときは可能です。

8. 今後、このスタジオでどんなことをしていきたいですか?

アーティスト・イン・レジデンス・プログラムを立ち上げて、国内外のいろいろな場所のスタジオやアーティスト・ラン・スペースと連携をとって、エクスチェンジできるようなプログラムを作り上げたいです。その第一弾として、2019年8月に台湾の映像アーティスト吳其育(ウー・チーユー)を招聘し、制作とリサーチを行なってもらいました。また、近くに山中町という小さな集落があり、そこの人たちともっと仲良くなりたいです。

9. このスタジオの個性や利点、自慢したいところは何ですか?

山中suplexは滋賀県大津市にあるシェアスタジオです。滋賀といっても京都との県境で、京都側、滋賀側どちらにも、車で10分ぐらいで市街地へと出ることができます。 山中Suplexは2014年に7名のアーティストが立ち上げました。2棟のプレハブと半屋外の広大なスペースという敷地を生かして、彫刻(立体物)制作に特化したスタジオとしてスタートし、スタジオ機能の拡張やギャラリースペースを新設して、現在では展覧会なども企画しています。2019年4月に新たなメンバーが5名増え、現在は10名のアーティストがこの山中Suplexを利用しています。

このスタジオの一番の特徴はなんと言っても、山と隣接した半屋外のスペースです。ギャラリーの展示壁もコの字型で屋外に面しており、ギャラリーも制作スペースも開放感にあふれています。春夏に2〜3回はBBQパーティ、秋冬には焼き芋と鍋パーティを開催し、山中suplexの風物詩となっています。

市街地からほど近い距離にありながら、この場所が山であり近隣に住民がいないことも開放感の理由のひとつです。この場所は、かつて白川砂の採掘地として山が削られ、その後に土建屋さんの資材置き場として使用されていました。隣近所へ気をつかうことなく、24時間制作できる環境であることが、スタジオとして一番重要な要素でもあります。

2019年に、新たにレジデンス・スペースを作りました。京都外(国内外問わず)から来たアーティストが滞在し、この場所を拠点にリサーチや制作を行ないながら、近隣のアーティストたちともコミュニケーションが取れる場所にしていきたいと考えています。

ちなみに「山中suplex」という名前は、山中町という地名とプロレス技であるジャーマンスープレックスからきています。この場所から世界をSuplex=ひっくり返していくという意味が込められています。

10. スタジオメンバーの今後の活動

□秋山ブク、中田有美、小林椋、小宮太郎(太字がスタジオメンバー)
「TO SELF UNBUILD」
会場:BnA Alter Museum SCG(京都市下京区天満町267-1)
会期:2019年12月20日(金)〜2020年2月9日(日)

□赤松和彦、伊東敏光、宇佐川良、大木茂、大谷一翠、景山淳吉、金折文男、喜種保男、小宮太郎、笹岡啓子、砂原久、田谷行平、名柄正之、新延輝雄、橋本武彦、浜崎左髪子、福井芳郎、丸橋光生、宮川啓五、山本美次(太字がスタジオメンバー)
アートギャラリーミヤウチ 常設展 2019-2(収蔵作品展)
会場:アートギャラリーミヤウチ(広島県廿日市市宮内字高通4347番地2)
会期:2019年12月2日(月)〜12月29日(日)

□小笠原周
小笠原周凱旋EXHIBITION「尼崎の伝説の彫刻」
会場:尼崎城址公園(兵庫県尼崎市北城内27)およびあまがさき観光案内所(兵庫県尼崎市神田中通1-4 中央公園内)
会期:2019年11月23日(土)〜12月25日(水)

□前谷開、石黒健一
ARTISTS' FAIR KYOTO 2020
会場:京都府京都文化博物館 別館(京都府京都市中京区東片町623ー1)および京都新聞ビル地下1階(京都市中京区烏丸通夷川上ル少将井町239)
会期:2020年2月29日(土)、3月1日(日)


山中Suplex


所在地:滋賀県大津市山中町91
ウェブサイト:https://www.yamanakasuplex.com/

スタジオ、ギャラリー、スクールからなるアートコンプレックス──
浄土複合



(左から)明楽和記、中村信、池田剛介

1. スタジオの開設時期は?

2019年3月、まだスタートしたばかりです。

2. スタジオの広さと家賃を可能な範囲で教えてください。

広さ:10〜20㎡/人
家賃:2〜3万円/人

3. 所属メンバーのお名前と専門とするジャンルを教えてください。

■スタジオ
明楽和記(現代美術)
黒木結(現代美術)
中村信(クラフト)
山本聖子(現代美術)
Juggling Unit ピントクル(パフォーマンス)
■ギャラリー
櫻田聡(FINCH ARTS
沢田朔(StandAlone)
■スクール
池田剛介(現代美術)
櫻井拓(編集者)

4. スタジオメンバーとの共同での活動は何かありますか?

共同よりも個別を重視するというのが前提ですが、スタジオメンバー間のみならず、併設されたスクールやギャラリーも含め、相互の触発や協働は起こりうるかと思っています。が、共同は前提ではありません。

5. なぜ、この場所をスタジオにしたのですか? どのようなかたちで始まったのですか?

この文章を書いている私(池田剛介)が家から制作場所に通う道すがら、廃墟状態で横並びになった物件を発見したのがきっかけです。特に募集はしていなかったのですが、興味本位でドアにメモを挟んでおいたら、約一年後のすっかり忘れた頃にオーナーから連絡がありました。

6. スタジオを始めてよかったことは?

アーティストや企画者、書き手など異なる立場の人たちが同じ地平で、それぞれの「制作」の場ができ始めているところでしょうか。

7. 一般の人がスタジオを見に行くことはできますか? それはいつですか?

基本的にスタジオは空いていませんが、ギャラリーは金土日の13:00-19:00、ウィンドーギャラリーは入れ替えの時期を除く年中無休の24時間見られます。

8. 今後、このスタジオでどんなことをしていきたいですか?

年に2回ほど「浄土解放」と銘打ったオープンスペースを行う予定です。

9. このスタジオの個性や利点、自慢したいところは何ですか?

浄土複合のいちばんの特徴は、スタジオのみならず、独立した運営によるギャラリーFINCH ARTS(代表:櫻岡聡)や、通りに面したウィンドーギャラリーStandAlone(企画:沢田朔)、アート・ライティング講座(2019年度講師:池田剛介、櫻井拓)をはじめさまざまなプログラムを行うスクールが並立している点かと思います。通りに面した2棟並びの建物で、両棟の1階がギャラリーおよびスクールで、それぞれ2階がスタジオスペース。それからスタジオは、いわゆるファインアートに限らず、パフォーマンスやクラフトまで含めて、多岐にわたるジャンルの制作者によって利用されています。

もうひとつの特徴は、京都市左京区の浄土寺エリアにあることでしょうか。空間現代によるライブハウス「外」やユニークな品揃えの書店「ホホホ座」、地点による劇場「アンダースロー」など、インディペンデントな場が近接しています。ジャンルを超えてコアな文化に、ごく身近に(徒歩圏内......!)接することのできる環境というのは珍しいのではないでしょうか。最近ではリトルプレス向けの印刷スタジオ「hand saw press Kyoto」も新たにオープンしました。そうそう、近くに一軒、面白そうな空き家もあります……。

あと、せっかくなので最後にスクールの話もさせてください。今年度のライティング講座では、現在、受講生のテキストを中心に盛りだくさんの内容でお届けする小冊子を制作しているところです。京都の書店を中心に、販売の取扱いをお願いする予定ですが、それ以外の地域でも置いてくださる書店やアートスペースなどありましたら、ぜひご連絡ください。

10. スタジオメンバー、ギャラリーの今後の活動

□黒木結(企画)
ALLNIGHT HAPS 2019後期「Kangaru」
会場:HAPSオフィス1F(京都市東山区大和大路通五条上る山崎町339)
会期:2019年10月20日(日)〜2020年3月27日(金)

□鬣恒太郎
「Will found 2020/2120」
会場:浄土複合ウィンドーギャラリーStandAlone(京都府京都市左京区浄土寺馬場町76)
会期:2019年12月11日(水)〜2020年1月20日(月)

□本山ゆかり
「称号のはなし」
会場:FINCH ARTS(京都府京都市左京区浄土寺馬場町76)
会期:2019年12月20日(金)〜2020年1月19日(日)

□山本聖子
アーティスト・イン・レジデンス参加
会場:Pier-2(No.1, Dayong Rd., Yancheng Dist., Kaohsiung City 803/台湾・高雄)
会期:2020年1月6日(月)〜3月30日(月)

□明楽和記
グループ展「Sexy」
会場:CAS(大阪府大阪市浪速区元町1-2-25 A.I.R. 1963 3階)
会期:2020年1月11日(土) 〜25日(土)

□明楽和記
個展「絵画」
会場:2kwギャラリー(滋賀県大津市音羽台3-29-1)
会期:2020年2月1日(土) 〜23日(日)


浄土複合


所在地:京都市左京区浄土寺馬場町75
ウェブサイト:https://jdfkg.tumblr.com/



撮影:前谷開

取材協力:BASEMENT KYOTO