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東京国立博物館 金子啓明氏に聞く:「国宝 阿修羅展」──古代彫刻から見る天平文化

倉方俊輔

2009年03月15日号

2009年3月31日より興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」が開幕する。開催にさきがけ、本展のみどころやねらい、会場構成のコンセプトなどを東京国立博物館特任研究員/興福寺国宝館長 金子啓明氏に伺った。

阿修羅──天平彫刻の象徴的作品

──3月31日から開かれます『国宝 阿修羅展』の最大の特徴は何でしょうか?

金子──まず展覧会の背景とし て、平城遷都1300年と中金堂復興記念ということを合わせた記念的な事業ということがあります。興福寺は和銅3年(710)の平安遷都の時、藤原不比等 によって創建されます。したがって、2010年は平城遷都1300年であり、興福寺創建1300年でもあるわけです。それから、興福寺が創建されて最初に つくられたお堂が中金堂ですが、何度も火事に遭って、享保2年(1717)に焼けた後は、仮金堂が文政2年(1819)と昭和49年(1974)に建てら れただけで復興されませんでした。その中金堂をようやく本格的に復興することになり、立柱式も2010年に予定されています。
 ですから、展覧会の一つの特徴は、中金堂が復興した後に収まる仏像群のうち、江戸時代の釈迦如来像を除いた各像が初めて一堂に会することにあります。高 さ3.6mを越える薬王・薬上菩薩像、運慶の父の康慶の作であるもと南円堂の四天王像。それから、西金堂の本尊だった釈迦如来像の頭部も展示されます。こ れはもとは西金堂にあったのですが、享保2年(1717)の火災でほとんどは焼けてしまって、首だけが救い出されたというものです。最近の研究でこれが運 慶の作である可能性がかなり強くなってきました。このようにみな興福寺の鎌倉復興期のものですが、話題性の高い仏像が多く含まれます。
 それともう一つ。実はこちらのほうが大きいのですが、興福寺の天平彫刻をまとめて展示することが最大の特徴になります。創建当時の天平彫刻で現在に伝わ るのは阿修羅と八部衆、十大弟子。なかでも阿修羅は日本の仏像のなかでももっともよく知られていて、親しみのあるお像です。今回は「国宝 阿修羅展」という展覧会の名前通りに、その阿修羅をクローズアップして、シンボライズします。阿修羅によって象徴される興福寺の創建時のあり方を探り、天 平という時代をもう一度、考えたいという狙いです。

重要文化財・薬王菩立像(やくおうぼさつりゅうぞう)重要文化財・四天王像 持国天立像(じこくてんりゅうぞう)
左:重要文化財・薬王菩立像(やくおうぼさつりゅうぞう)
木造、漆箔/鎌倉時代 建仁2年(1202)/奈良・興福寺蔵
右:重要文化財・四天王像 持国天立像(じこくてんりゅうぞう)
木造、彩色、截金/鎌倉時代 文治5年(1189)/奈良・興福寺蔵

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